生活習慣病
糖尿病と献血との関係、糖尿病の病態による分類。妊娠期の血糖変化~羊水が多いと危ない!?医療費負担の軽減方法
食生活の欧米化に伴い、年々患者数が増加している糖尿病。
糖尿病の疑いがある人は日本国内で約700万人にものぼるとも言われているのにも関わらず、実際に糖尿病の治療を受けている人は、わずか200万人程度であるとも言われています。というのも、糖尿病の初期段階では、痛みなどの自覚症状を伴いませんから気付くのが大変難しいんですね。
では、もちろん「献血をしたいけど、肥満気味だし糖尿病かもしれないんだけど受けてもいいの?」「やっぱり糖尿病患者は献血をするべきではないよね」と1人で悩んでいる方も多くいらっしゃるのではないのでしょうか?
こちらでは糖尿病と献血についてまとめてみましたので、気になる方は是非参考になさってくださいね。
◆糖尿病と献血との関係
糖尿病だからといって絶対に献血ができないということはありません。しかし、以下の様な点が引っかかる可能性は十分ありますので注意してくださいね。
・献血する側の安全のために
現在、体が不調を訴えている場合など、体調に異常がある場合には当然献血を控えるべきと言えます。
また、糖尿病などで動脈硬化が進展している場合、現在異常がなかったとしても採血などの影響によって脳卒中や心臓発作などを起こす恐れがあります。それだけでなく、採血中に低血糖などの発作を起こしても大変ですから、控えるようにしましょう。
・輸血を受ける側の安全のために
糖尿病の治療に薬剤(ビタミン剤や一般的な胃薬などを除く)を使用している場合には、献血を控えるべきです。
◆献血で糖尿病検査が受けられる
また、献血をした人に無料で実施している血液検査に、糖尿病の疑いがあるかどうかを調べる項目を新たに加えられていることを皆様はご存知でしょうか?
つまり、献血を受けることで糖尿病かどうかがわかるんですね。
ですから、糖尿病の早期発見のために献血を受ける際には、わざと食後に献血を受けるのがお勧めです。
血液検査などの結果で、「要注意」などの支持が出た場合には、絶対にそのままにして放置せず、すぐに別の検査や精密検査(ブドウ糖負荷検査)を受けるようにしてくださいね。
インスリン非依存状態って何?糖尿病の病態による分類
糖尿病に1型糖尿病、2型糖尿病の分類があるというのは多くの方が知っていると思います。しかし、もう一つの病態による分類を知らない人は多いのではないでしょうか?
今回は病態による分類の「インスリン非依存状態」と「インスリン依存状態」の特徴、主な治療方針についてまとめました。
「インスリン非依存状態」とは
インスリンが完全になくなっているわけではなく、不足気味程度です。直接インスリンを注射するなどのインスリン治療を行う必要はなく、食事療法、運動療法のみで対応できることが多いです。まれに経口薬などで治療を行います。糖尿病としても比較的軽い部類となります。
診断においては血糖値が高くても安定していること、ケトン体の増加がわずかである、空腹時血漿CPRが1.0ng/mL以上であることが基準となります。
「インスリン依存状態」とは
インスリンが完全になくなっています。食事療法、運動療法とともに直接インスリンを注射するなどのインスリン治療を行う必要があります。糖尿病として重い症状を呈する部類となります。
診断においては血糖値が高く、不安定であること、ケトン体の増加が顕著である、空腹時血漿CPRが0.5ng/mL以下であることが基準となります。
このように病態の重さによっても分類があります。治療方針も変わってきますし、周りの人が糖尿病患者さんに注意することも異なってきますので、知識として知っていただければ幸いです。
*ケトン体とは
インスリンが少なくなると糖をエネルギーに変えられなくなるため、脂肪やタンパク質からエネルギーを作ります。その時に発生する物質がケトン体であり、体にとって有毒となります。
*血漿CPRとは
インスリンが合成される前の物質であるプロインスリンがインスリンになるときに発生し、血液中に放出される物質です。CPRはインスリンと同じ量でるため、血液検査のみでインスリンがどのくらい作られているかを知ることができます。
妊娠中はインスリンの分泌・働きが不安定に!血糖値が不安定なら知るべき、妊娠期の血糖変化
1人の体の中にもう1人の体があるというのは、ある意味異常事態とも言えます。だからこそ母体の変化は激しく、自分の意識の及ばないところで色々な影響が出ます。そのひとつが、インスリンの働きや血糖値です。
妊娠して受ける女性ホルモンの影響
妊娠すると女性ホルモンの分泌が変化します。
その変化によってすぐに女性の体は変わり始め、基礎体温が高くなったり、心拍数が増えたりします。
その変化のうちのひとつが、インスリンの分泌です。
これは特に糖尿病を持っていなくても起こる変化で、インスリンの分泌を変化させることによって妊娠・出産の準備をするのです。
具体的には、インスリンの働きが強まります。
そもそもインスリンはぶどう糖を細胞に取り込ませてエネルギーにしたり、エネルギーストックの脂肪として蓄えさせる働きをします。
妊娠後期にはこうしたエネルギーが必要になりますので、インスリンの働きを強めて、エネルギーを蓄えようとするのです。
妊娠して起こるインスリンの変化
妊娠をきっかけに起こるインスリン分泌や作用の変化を見てみましょう。
インスリンが2~4倍も必要>
妊娠前に比べると、妊娠中は2~4倍のインスリンが必要です。
妊娠の最初の時期はエネルギーを体に蓄えるためにたくさん食べるようになり、その分インスリンが必要になります。
そして妊娠後半になってくると、インスリンの抵抗性が強くなることで、インスリンの量そのものがたくさん必要になります。
このときに糖尿病が発見されることも…>
もしそもそもインスリンの分泌能力が低ければ、このときに十分にインスリンの分泌ができないこともあります。
そのため妊娠をきっかけに2型糖尿病が発見されたり、妊娠糖尿病が診断されることもあります。
この変化に耐糖障害があるとついていけない
普段の血糖値の変化に対応するならまだしも、妊娠中はこうした予測のしづらい血糖値の変化が起きます。
しかもつわりがあれば、食べたものを吐いてしまったりして、一定の食事をとることも難しくなります。
それによって低血糖が起これば母体が危険です。すでに糖尿病を発症している、あるいは予備軍というママは、このことを十分に理解しておかなければいけませんね。
妊娠糖尿病~羊水が多いと危ない!?
糖尿病は、発生原因により、1型糖尿病、2型糖尿病、その他糖尿病、妊娠糖尿病の4種類に分けられます。2010年に妊娠糖尿病に世界基準が適用され、「妊娠糖尿病とは妊娠してから発見された、もしくは妊娠中に発症した、まだ糖尿病に至っていない糖代謝異常のこと」をいいます。ですので、妊娠中に発症した明らかな糖尿病は含まれません。妊娠中の糖代謝異常は多くの場合、一時的なもので、出産後に血糖値は正常に戻ることがほとんどです。ですが、一部の人は数年後に本当の糖尿病を発症したり、年をとってから糖尿病になったりすることもあります。
◆妊娠糖尿病と羊水過多
羊水過多とは羊水が妊娠の段階に関わらず800ml以上になる状態をいいます。羊水の産生が吸収を上回った状態とも言うことができます。羊水過多に陥る要因は、母体、胎盤、胎児の順番で3つ考えられます。羊水過多の原因は多岐にわたりますが、まずは妊娠糖尿病を疑われることが多いようです。母体が妊娠糖尿病になると、胎児の先天異常の確率が高まるだけでなく、羊水過多、巨大児(4000g以上)などが多く見られるようになります。妊娠糖尿病の場合も、通常の糖尿病と同じく、食事管理による血糖コントロールが必要不可欠ですが、胎児と母体の両方が健康に妊娠生活を送るためには、必要以上のエネルギーカットは危険ですので、入院した病院で適切な治療を受けましょう。
◆妊娠糖尿病が胎児に与える影響
妊娠糖尿病になると、母体だけでなく胎児へのさまざまなリスクが発生します。管理入院をし、血糖コントロールをしっかりおこなうことで、できるだけそのリスクを減少させましょう。 胎児への影響は以下のようなものが考えられます。
・奇形
・巨大児
・発育不全
・未熟児
・出生時の胎児の低血糖や呼吸障害など
・子宮内胎児死亡
特に問題となる奇形については、胎児の基本的な器官の形成が受胎から数週間のうちでおこなわれるため、妊娠に気が付くころにはすでに高血糖のまま数週間が過ぎている場合があります。ですので、妊娠糖尿病発症リスクの高い、親族に糖尿病患者がいる人や高齢出産を予定している人は、できるだけ計画的な妊娠と妊娠前から食事管理をおこなうことがおすすめです。
医療費負担を軽減!糖尿病で医療費控除を受けよう!医療費控除とは?
糖尿病の医療費負担の軽減を行うためのいくつかの制度が日本にはあります。合併症が起きていないと利用できない制度などが多いのですが、医療費控除は割と多くの場合に利用できる制度と言われています。
医療費控除とは
医療費控除は1年間に支払った医療費が所得の5%もしくは10万円を超えた時に一部が還付されるというものです。上限は200万円となっていますので注意してください。
また、医療費控除の手続きは確定申告の手続きと同じ時期に自分で行わなければなりません。手続きのためには領収書や所定の書類が必要ですので、病院でもらう領収書などをなくさないようにしてください。
糖尿病の医療費控除
糖尿病でも医療費控除の対象となる条件を満たしていれば医療費控除を受けることができます。治療費はもちろんですが、インスリン注射をしている方ならインスリン注射の購入費用、血圧計などの購入費用も対象です。ただし、血圧計は医師の指導に基づいて購入したという理由がなければいけません。
2006年に『糖尿病ネットワーク』が調査したところによれば、確定申告で医療費控除を申請したことがある方は6割以上でした。
実際に確定申告をしてみるとそれほど難しいものではないと感じている方も多いようです。ぜひ活用していきましょう。
医療費負担を軽減!糖尿病のお子さんを持つ家庭で利用できる制度
糖尿病と言えば中高年の病気と言われる一方で、子どものうちに糖尿病になる場合もあります。子どもの糖尿病と医療費、そして医療費負担軽減システムについて紹介いたします。
子どもの糖尿病
子どもの糖尿病は1型糖尿病がほとんどです。何らかの原因でインスリンを上手く作れないことが原因です。
子どもの糖尿病と医療費
子どもの糖尿病にも大人と同じように医療費がかかります。インスリン注射を中心的に行ったとして、大人の医療費を基準に大体年間6-7万円かかると予想すると、5歳で1型糖尿病を発症した子は75歳までに420-490万円の医療費がかかります。
その過程で合併症などを起こせば当然もっと医療費もかかります。成人するまでと見積もっても、5歳で1型糖尿病にかかったとすれば100万円近い医療費負担になるのです。
小児慢性特定疾患治療研究事業
これは子どもの病気のうち特定の疾患において医療費負担を軽減するシステムです。治療研究事業とあるように治療研究的な側面も持っているので、どちらかと言えば珍しい病気が特定疾患となる傾向にあります。小児1型糖尿病はこの特定疾患治療研究事業の対象です。
特別児童手当
扶養手当の一種です。年3回の扶養が1型糖尿病のお子さんを持つ親御さんに支給されます。糖尿病の進行度がどれくらいかによって、また、さまざまな条件によって支給額は異なります。
子どもの糖尿病でも医療費は結構かさみます。制度を活用して医療費負担を減らしてみてはいかがでしょうか。
糖尿病で医療費がかさむ・・・医療費負担を軽減しよう!高額療養費制度について
糖尿病の医療費負担は決して軽くはありません。人によっては年間で10万円以上の医療費がかかってしまうこともあります。そんなときに医療費負担を軽減するシステム「高額療養費制度」を利用するのも良いかもしれません。
高額療養費制度とは
高額療養費制度は厚生労働省が提供しているシステムです。医療機関、薬局などで支払った療養費が高額であれば上限額を定め、上限額以上の金額は還付されるという制度です。高額療養費制度において、重要なのは上限額です。
上限額がどれくらいになるかによって負担は異なると考えてください。まずは70歳以上、70歳以下で分かれます。70歳以上の場合は最低上限額15,000円から80,100円+(医療費-267,000円)×1%までさまざまです。70歳未満の場合は上位所得者、一般所得者、低所得者で上限額が異なります。
糖尿病と高額療養費制度
糖尿病の治療においても、高額療養費制度を利用することは可能となっています。まずは高額療養費制度の給付手続きを行わなければなりません。また、高額療養費制度の申請書の他に領収書など用意するものが多いので、しっかりと下調べしたうえで、高額療養費制度に申し込まなければなりません。
高額療養費制度は申請してから還付までにはやや時間がかかるので、利用できたとしても、初期のうちは一時払いでの医療費がかかることを知っておくと良いでしょう。
(イラスト by: [http://www.irasutoya.com/2013/09/blog-post_4641.html])
著者: カラダノート編集部