ガン・悪性腫瘍
胃の粘膜にできた悪性腫瘍「胃がん」の特徴とは?
胃がんとは、胃の粘膜にできた悪性腫瘍を指し、日本人の死因第一位であるがんの中でも、死亡する人が2番目に多い病気です。胃がんは女性よりも男性のほうがかかりやすいとされており、年代でみると50-60代の人に集中しています。
最近は胃がんは減少傾向にあるとされ、その理由として健康診断や人間ドックの普及により、早期発見ができるようになったことです。また、発見から治療して治癒する治癒率も、早期発見の場合は9割を超える高い確率となっています。早期発見して早めの対策を打つことが、胃がんにとってとても重要なのです。
胃がんは、大きくわけて3つあるといわれています。早期胃がん、進行胃がん、そしてスキルス胃がんです。
早期胃がんの特徴とは
早期胃がんの特徴は、がんが胃壁内部表面から粘膜下組織層にとどまっている状態で、さらに奥の筋層、漿膜層まで侵食していない状態です。
進行胃がんの特徴とは
進行胃がんの特徴は、早期胃がんからさらに進んで奥の筋層、漿膜層まで進んでいる状態です。
ステルス性胃がんの特徴とは
ステルス性胃がんは、胃壁の中から進行し、胃を固まらせるという症状が見られます。胃壁の中からの進行が進むため、早期発見が難しいとされます。30-40代の女性にかかりやすい胃がんといえます。
早期胃がんの症状の特徴
胃がんの症状は非常にわかりやすいとされています。胃がんと診断されたころにはすでに手遅れになっている場合があるので、以下のような症状がある場合早期胃がんの可能性を疑ってみるほうがよいでしょう。
・げっぷが多くでる
・食欲不振
・胃の違和感・不快感
早期胃がんは、胃の機能が弱くなっているような症状が見られます。こうした症状が現れた場合には、早めに胃がんを疑ったほうが良いでしょう。
早期胃癌では胃潰瘍のような症状も!!胃癌の原因とは?
胃癌は見た目の特徴により細かく分類される
胃壁は胃の内側から、粘膜層、粘膜筋板、粘膜下層、漿膜となっています。
胃癌は粘膜に発生し、時間とともに粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜へと進行します。
粘膜下層までのものを早期胃癌、固有筋層より深くなったものを進行胃癌と呼びます。
原因
胃癌の原因として、食物をはじめとする「胃内環境」が重要視されています。
単一の原因ではなく、さまざまな要因が重なることにより、粘膜細胞が刺激されやすい環境ができると考えられています。
その要因にはいろいろありますが、とくに重大なものは喫煙です。
喫煙者は非喫煙者よりも約三倍、胃癌を発症する率が高いのです。
その他の要因としては、漬物などの保存食から発生する化学物質、塩分の多い食事、慢性胃炎、ヘリコバクター・ピロリという細菌などがあげられます。
約半数の人が無症状。潰瘍症状が出ることも
早期胃癌のうち最も多い陥凹型では、胃潰瘍のような症状があらわれることがあります。
この癌の中には潰瘍ができることがあり、それによる症状があらわれるのです。
典型的な潰瘍症状は、空腹時にみぞおちのあたりがシクシク痛み、牛乳を飲んだり食事をとったりするとよくなる、というものです。
しかし、軽い胸やけや不快感、消化不良といった漠然としたものから、出血や穿孔(穴が開いて腹膜炎になる)などの激しいものまでさまざまです。
癌が進行してくると、食欲不振、体重減少、慢性の出血による貧血などがみられますが、たいてい上腹部の重苦しい感じをともないます。
ただし、約半数の人はまったく無症状なので要注意です。
胃の入り口と出口の部分に癌ができると、食物のつかえ感があらわれます。
入り口が狭くなった場合は飲み込みにくい感じ、出口が狭くなった場合は食後の胃のもたれやゲップ、嘔吐などが主な症状となります。
治療法
進行度に応じた治療が行われます。
完全に治すためには、手術が唯一の治療法ですが、非常に早期のものは内視鏡で切除することもあります。
ただ、実際には、手術で切除できないほど進行した癌もあとを絶ちません。
その場合は化学療法、放射線療法、免疫療法などを組み合わせた集学的治療が行われます。
胃がんの「初期症状」と「進行症状」どのようなものがある?
臓器の内側には痛覚というものがありませんから、不調が起こっても痛みを感じることができません。日本人の死亡原因として多い胃がんでも、胃の内膜にがんができただけでは症状に乏しいのが現状です。
胃がんの症状
胃がんは早期ではもちろんのこと、場合によってはかなり進行した後でも無症状のことがあります。ただ、胃がんそのものの自覚症状が乏しくても、胃がんに付随して起きる胃炎や胃潰瘍などの症状を自覚して、病院を受診することはしばしばあるようです。
胃がん早期に見られる症状
消化不良
胃の不快感
食後の膨満感
食欲低下
胸やけ
軽度の悪心
吐き気
胃がんによって消化管内の空間が狭くなったり、食べ物の通過が悪くなって胃が重たい感じがするなどして、上記のような症状が出ることがあります。食べ物の通過が悪くなると、食べ物が逆流してくるような感覚で、胸焼けが生じることもあります。
また、胃炎や胃潰瘍を合併している場合には、これらによって悪心、吐き気が引き起こされることもあります。
進行した胃がんで見られる症状
体重減少
血便
嘔吐
胃痛
黄疸
腹水
嚥下困難
胃の働きが悪いと、食べることが体の不調につながるので、食べることから遠ざかろうとして痩せてしまうということもあります。ただ、それ以上にがんが胃の中にできている場合、たくさん食べていたとしても、がんに栄養をとられてしまって痩せてしまうということも言えます。
また、がんの表面が崩れると出血し、それが便に混ざって黒い血便になることもあります。ただこれは胃がん特有のものではなく、胃潰瘍でも起こることがあります。
他にも症状は様々ですが、どれも胃がんの特徴的な症状というには足りないものばかりです。軽微な症状でも原因不明で持続的に見られるなら、一度病院を受診した方がよいでしょう。
胃がんの原因に、遺伝子的要因がある?!
がんは一般的には、細胞の病気です。正常に機能していた細胞が何らかの原因でがん化し、一定の時期を経ると死滅するはずが、死滅せずに増殖し続けてしまった結果、発生する病気といえます。がん化する原因については、詳しいことは明らかになっていませんが、何らかの原因で細胞の核が、傷つけられることで発生するといわれています。
胃がんの原因
胃がんの原因については、喫煙、塩分の摂りすぎなどの食生活、ヘリコバクター・ピロリ菌などであるといわれていますが、他の原因として遺伝的な要素があるとも考えられています。
遺伝による胃がん
胃がんの遺伝性は、胃がんの中でもなかなか早期発見が難しいとされるスキルス性胃がんにおいて、指摘されています。スキルス性胃がんとは、胃の筋層から外側に向かって発生する胃がんであるため、胃の内側の粘膜の表面上になかなか現れないことから、初期の段階での発見が難しいとされています。スキルス性胃がんは、リンパ液や血液を通じて他の臓器やリンパ節にがんが転移しやすくなっている、進行がんの一つと言われています。
このスキルス性胃がんにかかりやすい家系があるといわれています。胃がんに関係する遺伝子としていくつかの遺伝子が研究されていますが、その中でも、CDH1遺伝子の働きとスキルス性胃がんの関係性が、多くの研究者によって指摘されています。
この遺伝子は、本来はたんぱく質を合成する遺伝子なのですが、胃の中で突然変異し、がん細胞化してしまうと、比較的短時間の間に胃の中に広がってしまうといわれています。この突然変異性こそが遺伝によるものだという指摘があるのです。
最後に
しかしながら、胃がんの原因には上記でも述べたとおり食生活があり、家族で同じような食事を摂っていることが胃がんの発生リスクに影響を及ぼしているともいわれています。家族に胃がんを発症させたことがあるという方は、しっかり胃がんの検査を受けると良いでしょう。
罹患率、死亡率、性差…胃がんについて知ろう!
胃は消化器官のひとつであり、食道からつながり、出口は十二指腸へとつながっています。この胃の内壁にある粘膜の中の細胞が、何らかの原因によってがん細胞になったものを胃がんと言います。
胃がんの罹患率・死亡率
胃がんの罹患率や死亡率を見ると、他の多くのがんと同様に加齢と共に割合が高くなっていきます。特に胃がんの場合40歳代後半から50歳くらいから増加傾向に転じ、60歳あたりでピークになります。また特に70歳以上では手術を受ける患者が増加する傾向にあります。
性差
男女比で言うと、女性よりも男性の方が約2倍と多くなっていますが、若年層の胃がん患者では女性の方に多い傾向があります。
胃がんができる部位
ひとくちに胃がんと言っても、胃は入り口の噴門部、中心部分の胃体部、出口部分の幽門部という風に上部、中部、下部に分かれます。ですから胃がんのできる部位の割合としては胃全体、上部、中部、下部の順の割合で、1:2:3:4の割合で見られます。
国際比較
罹患率を国際的な比較の中で見ると、日本を含めた東アジアや南米では罹患率が高く、逆に欧米などの白人では低くなっています。欧米でもアジア系の移民では罹患率が白人より高く、本国の在住者よりも低い傾向にあります。これは胃がんの発症が遺伝によるものだけでなく、食生活の変化をはじめとして生活習慣の変化によって起こるものと思われます。
日本では減少
胃がんは日本ではいまだに多く見られるがんですが、がん全体の死亡率が増加傾向にあるのに対して胃がんの死亡率は減少傾向にあります。これには生活水準の向上や意識の向上、診断における技術の向上などが要因になっているものと考えられます。
胃がんは未だに数は多いものですが、それに対して死亡率が低下してきていますので、早期に発見すれば治るがんだということが言えます。
著者: カラダノート編集部