メンタル
妄想が現れる?統合失調感情障害(分裂感情障害)の病識
ここでは妄想や幻聴がでてくる精神病のひとつ、統合失調感情障害(分裂感情障害)について簡単に説明します。
統合失調感情障害って何?
統合とは、精神や考えの統合を表します。順序良く考えたり、考えをまとめられる状態です。
これがうまくできなくなることを「統合失調状態」と言い、お酒を飲んだり、熱でふらふらするときなど、一般の人でも経験するかもしれません。それが特に原因もないのに日常的にうまくできず障害になることを、「統合失調症」と言います。
「統合失調感情障害」は、この「統合失調症」の症状に加え、「気分障害」の症状が同時に現れる人のことを言います。期間を変えて現れる場合は診断されません。
「気分障害」とは長期間、行き過ぎた悲しい気分が続いたり、逆に行き過ぎたハイな状態が続く、またはその両方が現れることです。うつや抑うつ、躁うつ状態と言われるものです。
統合失調症の初期に気分障害に似た症状がでることもあるため、『統合失調感情障害』の診断については、診断名が二点三点することもあります。
統合失調感情障害の診断がついた人の訴え例
・人から被害妄想だとか、考えすぎであると言われる。意味も分からず、暗い気分から抜け出せず毎日手首を切りたくなる。発狂したくなる。
・長男が生まれつきの難病で亡くなってからうつ気味になり離婚した。それをきっかけに兄と暮らすようになったが、兄が「お前は粗大ゴミ」といってる声が聞こえて止まらない。
家のことは何もする気が起こらず、自分なんて必要ないからと何度も死のうとしてるが、そのたびに死んだ子供の「お前に殺された。生き地獄を味わえ!」という声がして死にきれない。長女からも罵倒ばかりされて、どうやったら死ねるか毎日考えている。
・職場で嫌なことばかり言われていじめられているが、それを訴えても妄想だと言われ相手にされない。家に帰ると昼間言われていた同僚のいじわるな言葉が聞こえてきて止まらず、ずっと大きな声で独り言をいっている。家のことは何もやる気が出ず、ゴミ屋敷の中で半年前から暮らしている。
以上のような点をふまえ、疑いのある方は精神科で相談しましょう。
統合失調は脳の病気です。カウンセリングだけでは治りません。薬物治療と作業療法が有効と言われています。
分裂感情障害と呼ばれていた「統合失調感情障害」の診断について
統合失調との違いがわかりにくい『統合失調感情障害』の診断についてまとめました。(『統合失調感情障害』は以前『分裂感情障害』と呼ばれることもありました。)日本で精神病の診断に使われている「DSM」と「ICD」を参考に、わかりやすく書き出しました。
診断基準
1)妄想・幻覚、まとまりのない会話、まとまりのない行動、緘黙(異常にだまりこむ)のうちいくつかがあてはまる。
2)1.が別の身体的病気によるものではない。
3)1.が薬やアルコール、薬物の作用によるものではない。
4)統合失調症の活動期(幻覚・妄想・思考障害)の症状と同時に、大うつ病または躁病状態があり、これが二週間以上続いている。
※大うつ病:死別などの大きな悲しい出来事もないのに、二週間以上うつ状態が続いている。
※躁病:高揚していて、考えが次々に浮かび、常に行動していないといられない。性欲や食欲がさかんな状態。
『大うつ病や躁病、気分障害との違い』
気分がはっきりしていることがなく、幻想や妄想、幻覚が二週間以上持続する。
『非定型精神病との違い』
かつて診断名がはっきりしていない頃、「複数の病名の症状が混ざった精神病」という意味で「統合失調感情障害」が「非定型精神病」と診断されることがありました。現在は『統合失調感情障害』という名前が確立してきたため使われなくなりました。
統合失調感情障害は脳の疾患です。薬で症状を抑えたり、自分のパターンを把握しながら、治ったような状態で暮らすことは可能ですが、人生に大きな変化が加わると、急激に悪化することがみられます。主治医をもち、協力してもらいながら、慎重に症状をコントロールしていくことが必要な病気と言えます。
分裂感情障害(統合失調感情障害)と統合失調症の違いって何?
分裂感情障害は別名で統合失調感情障害という名前もあり、妄想などが主な症状の統合失調と名前がよく似ています。
一体統合失調症と分裂感情障害にはどんな違いがあるのかを見ていきます。
分裂感情障害(統合失調感情障害)とは
分裂感情障害(統合失調感情障害)とは、統合失調症的な妄想などに加えて躁鬱型の気分障害を併発する病気です。
分裂障害+感情障害と考えてみるとわかりやすいです。
ちなみに、統合失調よりも分裂感情障害(統合失調感情障害)の方が予後はよいとされていますが、うつ病などの気分障害の予後よりは悪いです。
躁鬱型、抑うつ型
分裂感情障害(統合失調感情障害)の気分障害の方は、躁鬱型と抑うつ型に分かれています。
躁鬱型は躁うつ病を思い浮かべるとわかりやすく、気分が高揚して異様なほどテンションの高い時期、まったく内向的で鬱々とした時期を定期的に繰り返します。
抑うつ型はうつ病とほとんど同じで、ずっと内向的で鬱々とした時期が続くのが特徴的です。
統合失調症にも気分の波はある
症状だけで分裂感情障害(統合失調感情障害)と統合失調症を完全に見分けるのは難しい、と言われています。
というのも統合失調症にも気分の波はあり、基本的には妄想や興奮を中心とする陽性症状が出る時期、意欲の低下を中心とする陰性症状が出る時期があります。
特に陰性症状の方は抑うつ型の分裂感情障害(統合失調感情障害)と似ているので、すぐに鑑別できるとは限らないのです。
分裂感情障害(統合失調感情障害)と統合失調症には違いがあるものの、基本的には見分けにくい病気です。
そのため、最初病院を受診した時点ではどちらなのか鑑別がつかず、長期にわたっての観察が必要なこともあります。
その場合でも薬物療法や心理療法を随時試しながら、症状の回復を促します。
統合失調症の症状「幻聴」ってどんなもの?
統合失調症の症状の一つとして「幻聴」があります。
当然の如く、周りの人には一切聞こえていないのですが、本人にはその声や音がはっきりと聞こえているので、周りが「そんなの聞こえない」とか「そんなこと言ってない」といくら言っても、本人には分かってもらえないものです。
幻聴には、統合失調症が発症したときから、服薬を始めて回復期に向かうまでの時間軸からみて様々な種類があります。
1) 発症前後の、声ともざわめきともつかぬもの。
何となく音が聞こえるけれど、それは何かの音がねじれて声に変わっているような不思議な感覚だといいます。
2) 症状が活発な時の酷い幻聴
いくら耳を塞いでも聞こえてくる、世界全体が叫び出したような極期の幻聴をいいます。人によってその内容も様々で、「とにかく辛い」ようです。
3) 不安によって強まる幻聴
極期を過ぎて、次第に力が弱まり、それとともにだんだん同じ言葉の繰り返しになる幻聴をいいます。これは不安感を感じるとその幻聴が強くなるといわれています。
4) 繰り返しの幻聴
回復期のときにおこる同じ言葉や内容の繰り返しの幻聴になります。退屈なときや、場面の環境音が変わった時などにおこり、ある程度聞き流す事ができるものです。
5) 突発的な、過去に起因する幻聴
過去のショッキングな事件のときの現実の声が生々しく聞こえます。これは、その方の心の傷を表しているそうです。
どの幻聴もずっと続くということは少ないようで、徐々に内容も変わりますし、その頻度も聞こえ方も変わってくるようです。
1〜4は回復に応じて移行していくといわれている内容です。
5に関しては、本人の体力や気力が回復するにつれて、徐々に聞こえてこなくなるようです。
どちらにしても、本人には辛いことに変わりはないと思います。
統合失調症患者は幻聴や妄想が好き?
統合失調症患者の幻聴は投薬やカウンセリングなどの治療によって消失していきます。しかし、幻聴の消え方はその後の症状に大きな影響を及ぼします。
投薬で幻聴があっさり消えても
投薬によって幻聴がぱったりとおさまってしまう人もいます。しかし、その患者さんの中には「幻聴は苦しいけれど、薬で消えてしまうとまた起こるのではないかと思って怖い」と言う人がいます。幻聴を聞いている間は、その幻聴を、実感を持って聞いているのが統合失調症です。いざそれが薬によって消えてしまっても、「もしかしたらまた」の恐怖におびえることになるのです。
幻聴は私
幻聴は統合失調症の人にとって実感を伴って聞かれています。そのため、幻聴自体が患者自身のパーソナリティになり、なくなってしまうと自分の特徴が失われたかのような気がしてしまうとも考えられています。
ゆっくり自然と消えるのがいい
幻聴が消えるためには準備が必要です。患者本人が「幻聴が消えてもいい」「幻聴がなくなっても寂しくない」と思えれば、もう幻聴は患者にとって必要のないものですから、自然と消えていきます。
幻聴や妄想は逃げ道
統合失調症の初期は思考が散り散りになって、考えがまとまらない混乱状態です。その混乱状態をなんとか統一しようとして現れるのが幻聴や妄想とも考えられていますその慣れ親しんだ道を消してしまうわけですから、もしかしらた最初に戻るのではないかと怖いですし不安なのです。
このように、幻聴や妄想は、統合失調症の患者が見つけた、脳を統一しようとする方法だと考えられています。こういった考えを知っていれば、統合失調症の患者について理解を持った接し方ができるかもしれません。
統合失調症の原因とは~ドーパミン仮説~
統合失調症の神経薬理学的、あるいは神経生化学的な研究が、近年めざましい成果をあげつつあります。ご存知の通り、統合失調症の原因としては様々な仮説が論じられていますが、今までの所、もっとも有力視されているのが「ドーパミン仮説」というものです。
ドーパミン仮説とは
この「ドーパミン仮説」とは、統合失調症では中脳辺縁系においてドーパミン系ニューロンの過剰活動が生じていて、これが統合失調症の発症と関係しているのではないかという説です。
人は外部から何らかの刺激を受けると、それを脳に伝えようと、神経がドーパミンという伝達物質を放出します。
本来は、この刺激は限りなく事実に近い形で脳に伝えられますが(例えば1つの情報は1つとして伝わる)、ドーパミン系ニューロンの過剰活動が生じている場合は、1つの情報が10にも100にもなって脳へ伝えられ、脳が混乱をきたしてしまうというわけです。
このドーパミン仮説を支持するいくつかの事実があります。その神経薬理学のひとつがJ・トレードやP・ドニケルによるクロールプロマジンに関する研究です。
近年の研究
統合失調症においては、ドーパミン系の過剰活動が生じているのであり、抗精神薬はドーパミンの受容体を遮断することでこの過剰活動を抑え、その結果、統合失調症が治ると考えられるようになりました。現在使用されている抗精神薬の多くが、この仮説に基づいています。
近年は、CTスキャン(コンピューター断層撮影装置)、MRI(核磁気共鳴断層撮影装置)、PAT(ポジトロン断層撮影装置)といった画期的な画像診断装置の出現により、統合失調症脳の形態学的な研究に新たな新生面が開かれようとしています。
画像診断所見と精神症状を比較検討したり、脳室の状態や形態学的所見を比較することで、様々な事が分かってきています。
今後、このドーパミン仮説が大きく変わる新事実が発見される日が来るのも、そう遠くないのかもしれません。
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著者: カラダノート編集部