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ガン・悪性腫瘍

難治性大腸がん『KRAS変異型』に有効な分子標的薬2剤の併用

 

『セツキシマブ』『ソラフェニブ』併用が難治性大腸がんに有効

『セツキシマブ』は日本において2008年に切除不能進行再発大腸がんの治療に高い効果を上げるとし治療薬として承認されました。通常、ヒトの細胞膜上には上皮細胞増殖因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)という細胞を分化・増殖させる機能がありますが、これが癌化によって遺伝子の構造変化が起こると癌の増殖・浸潤・転移などを引き起こす原因となります。

 

セツキシマブは、EGFRに競合的に結合して、この増殖機能を阻害することで、癌細胞の増殖・転移を抑制する効果があります。しかし、このEGFRに関する細胞シグナル伝達の下流にある『KRAS遺伝子』という遺伝子に突然変異が起こると、セツキシマブが無効になるということが分かっています。

 

しかし近年、肝細胞がん治療薬の『ソラフェニブ』との併用で、抗がん細胞効果が回復することが2008年今年4月に米国立癌研究所により報告されています。

以下では、その詳細について見ていきたいと思います。

 

KRAS遺伝子とは?

『KRAS』とは、上皮成長因子受容体(EGFR:上皮細胞の成長・修復を行う)のシグナル伝達経路下流において、【細胞の生存、血管新生、増殖、転移】に関与するタンパク質を制御するという役割を持った遺伝子です。細胞ががん化すると、異常な機能を持った『KRAS変異型タンパク質(KRAS変異型)』をコードした遺伝子が発現されることがあり、それによって抗がん剤の作用が無効になる場合があります。

 

<KRAS遺伝子の変異型は、常に細胞増殖を促してしまう?>


正常なKRAS遺伝子(KRAS野生型)を持ったがん細胞の増殖を阻害するためには、EGFRのシグナル伝達経路の上流にて、その経路を遮断する抗がん剤を使用すれば良いのですが、異常な機能を持つKRAS変異型の癌細胞では、EGFRを介したシグナル伝達による活性化がなくても恒常的に「活性化」されているため、上流を遮断しても下流のがん細胞増殖は制御されないまま、増大し続けるということになります。

 

2種類の抗がん剤(分子標的薬)について

上記のがんに効果的とされるのは、2種類の分子標的薬(『セツキシマブ』『ソラフェニブ』)の併用です。セツキシマブは、【腫瘍の増殖シグナルを抑制する】分子標的薬で、ベバシズマブは、【腫瘍の血管新生を阻害する分子標的薬です。

 

<セツキシマブの詳細について>

セツキシマブは「EGFR陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」 に対する治療薬であり、 「ヒト上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)」を標的とするモノクローナル抗体で、競合的にEGFRに結合することでリガンド(受容体に特異的に結合する物質)である上皮細胞増殖因子(EGF)などの結合を阻害し、がん細胞の増殖・腫瘍血管新生・細胞浸潤など多くの細胞機能を抑制します。

 

<KRAS変異型では、セツキシマブは無効である>

また上記のように、EGFR細胞シグナル伝達の下流にはKRAS遺伝子がありますが、KRAS遺伝子に突然変異が起こると常に活性化されシグナル伝達されるため、治療効果が乏しいことが示されています。セツキシマブの使用前にはKRAS遺伝子変異検査を行い、有効性を確認することが推奨されています。


<ソラフェニブの詳細について>

ソラフェニブは、細胞分裂と血管新生(がん組織への血液供給)という、がんが増殖する際に必要な機能の活性に関与している2種類のキナーゼ群に作用することが知られています。ソラフェニブは、進行性腎細胞癌の治療薬として承認されている分子標的薬です。上記の『セツキシマブ』との併用により、EGFRシグナル伝達経路のKRAS遺伝子の下流にある『BRAF』の阻害活性を行うことで、シグナル伝達をブロックし、癌細胞の増殖を阻害するとされています。


臨床試験について

2008年4月に米国立癌研究所(NCI)のShivaani Kummar氏により報告された、KRAS遺伝子変異型大腸癌へのソラフェニブとセツキシマブ併用有効の可能性に関する臨床試験があります。

 

◆KRAS遺伝子変異型の大腸癌患者への、ソラフェニブ・セツキシマブ併用投与の臨床試験
 
【対象】上皮細胞成長因子受容体(EGFR)陽性、KRAS遺伝子変異陽性の転移性大腸癌患者(再発又は進行した患者を対象)
【試験内容】セツキシマブを(28日を1サイクル)、1週目400mg/m2、2週目以降250mg/m2投与、ソラフェニブ400mgを1日2回経口投与した。16人中15人が2サイクルを終了した(患者の年齢中央値は54歳(21~81歳)、うち男性9人、全員がPS1(=全身状態:軽作業ならこなせる程度))。
【結果】15人中6人の患者で4サイクル以上の安定状態(=SD)が得られた。

 

最後に

上記のように『ソラフェニブとセツキシマブ』の併用療法は有効性が示されており、今後切除不能進行再発大腸がんの治療薬に用いられる可能性があります。臨床試験の結果として、良く見られた副作用には【皮疹、血中電解質濃度異常、高血圧、下痢など】が挙げられており、グレード2以上(はっきりとした疼痛)手足皮膚反応を起こした患者もいなかったとされることからも比較的副作用による影響も少なそうです。今後の動きにも注目していきたいところです。

 

(photoby://pixabay.com/ja/%E8%96%AC-%E6%B2%BB%E7%99%82%E6%B3%95-%E3%82%BF%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88-%E8%96%AC%E5%B1%80-%E5%8C%BB%E7%99%82-%E7%97%85%E6%B0%97-%E7%97%85%E6%B0%97%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82-257344/)

著者: あせちるこりんさん

本記事は、2016-07-28掲載時点の情報となります。
記事内容について実行の際には、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


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