生活習慣病
知っておきたい心臓病の応急処置は?ニトログリセリンは心筋梗塞に使えない!?
心臓病の薬としてよく知られているのがニトログリセリンです。もしも、心臓病患者が倒れているときにニトログリセリンを持っていてすぐに用いれば、救急車到着までに心停止・呼吸停止などを防ぐことが出来るケースも多いです。
その一方で、心筋梗塞に関してはニトログリセリンは使えないとされています。
●心筋梗塞と血圧の関係
ニトログリセリンは血管を拡張して血液の流れを改善してくれる作用があるので、狭心症の治療に用いられています。
ですが、重篤な心筋梗塞の場合は血圧がすでに下がっており、これ以上血管を拡張してしまうと低血圧症状で命を落としてしまう危険性があるのです。そのため、重篤な心筋梗塞の治療においてはニトログリセリンは使用できません。
●血圧が下がっていなければ胸痛軽減に役立つ
同じ心筋梗塞であっても、血圧が異常なほど下がっている重篤な症状でなければ、ニトログリセリンは胸痛に効果を発揮することがわかっています。もちろん狭心症でニトログリセリンを使う場合と同じように、ニトログリセリンだけで治るわけではありません。
また、閉塞部にニトログリセリンが働きかけるのは難しいので、狭心症への効果ほど高い効果は望めません。
●患者の容体がわからなければ使わない!
例え自分が応急処置者としてニトログリセリンを持っていたとしても、素人目には低血圧を起こしている心筋梗塞かどうかはわかりにくいです。そのため、いざというときのことを考えれば、ニトログリセリンは使わない方がベターな選択と言えるでしょう。
ニトログリセリンは心臓病の薬ではありますが、低血圧を伴う心筋梗塞、緑内障や脳卒中の持病を持っている方では使用できないケースが多いです。
患者の容体や諸々の病気、体質がわからない場合は、応急処置でのニトログリセリンの使用は控えてください。
慌てないで!狭心症発作の応急手当
狭心症の方で、急に胸に痛みが出たり、苦しいと思ったら…
まず一番楽な姿勢でしずかに
狭心症の発作は、急に強くみぞおちから左胸を圧迫するような痛みが走ります。
一時的に血液が流れにくくなったことで起きる非常に不快な痛みで、血液の流れが戻るとともに、痛みも引きます。
この時には、あせらずに、まず一番楽な姿勢で安静にして痛みが引くのを待ちます。
・椅子にゆったりと座る
・前屈みになる
・背中を壁にもたれかける
など、自分が一番らくだと感じる姿勢になりましょう。
とくに、はじめての発作のときには、数時間は安静にして様子をみることが必要です。
頓服薬があれば使用
ニトログリセリン等の発作時の薬を処方されていたら、これを服用し、安静にします。
舌下錠であるニトログリセリンは、舌の下に入れてそのままにします。軽めの発作であれば、このまま血液の流れが安定すれば大丈夫です。発作が収まってから、病院へ行きましょう。
発作のきっかけ
狭心症の発作は、次のようなきっかけで起こりやすい傾向があります。
・急いで歩く
・階段を上る
・重い荷物を持つ
・興奮する(脈が速くなる・血圧が上がる)
・食べ過ぎ
・排尿、排便時
・過労
・飲酒、喫煙
・入浴
・起床直後
・寒い空間に出る
このような発作のきっかけになる状況を、日常生活でできるだけ避けることも大切です。
発作が起きたら、慌てず、落ち着いて、周囲の人に異常を伝えましょう。
激しい発作のときには、救急車を呼ぶ必要がありますから、この判断は間違えないようにしましょう。
ニトログリセリンは防水容器で身につけよう
心臓発作が起きたときのために、頓服で処方されるニトログリセリン。
いざという時のために、いつでも飲めるような携帯の方法を考えておきましょう。
ペンダント型
ドラマなどでも見かけますが、ニトログリセリンの携帯用に専用のペンダントなどが販売されています。
ニトログリセリンは、湿気を含むと効果がなくなってしまいますので、防水性が重要。
また、いざという時、すぐ取り出せることも大切。
そのため、防水性能がある専用ロケット型のペンダントに入れ、首から下げている人が多いのです。
薬の保管としての機能
・汗をかいても薬が湿気ない、
・薬がぼろぼろにならない、
などの点も気をつけましょう。
携帯用以外の家庭で保管する分も同じです。
ニトログリセリンの使い方:飲んじゃだめ「舌の下」に置く
ニトログリセリンは、水でごくんと飲み込むと効果がない、「舌下錠」という形の薬です。
胃から薬の成分を吸収するのではなく、口のなかの粘膜から直接血液中に取り込ませるもので、心臓にすぐに届くのが特徴です。
ニトログリセリンは、取り出したら舌の下に挟み込み、静かにします。
下の裏側の粘膜から血液中にニトログリセリンが入れば、じきに効果が出ますから、その間壁などに寄りかかり、らくに呼吸できる姿勢をとりましょう。
発作を起こしている人をサポートするときも、おちついてニトログリセリンを正しく含ませて上げましょう。
取扱には十分注意して
ニトログリセリンは、爆薬の材料でもありますから、取扱には十分な注意が必要です。
ネックレスタイプ以外にも、キーホルダー型もあります。
メーカーによっては、処方された際に、ケースがついてくる場合もあるようです。
周囲の方は、心臓の悪い方がニトログリセリンをどんな形で携帯しているかを知っておくと、いざというときに安心です。
ご家族からネーム入りでプレゼントするのもよいですね。
実は簡単だった!?覚えておこう、AEDの使い方
最近、公共の場所などに必ずと言っていいほど設置されているAED。
いざという時、使うことができますか?
自動設定なので誰でも使用できます
日本では、年間約3万人が、突然死しているといわれています。
病院の外で心臓停止となるような事態がおきると、救急隊が到着して徐細動を実施するまでの時間で、救命できるかが決まるのです。
心室細動では、徐細動が1分遅れると救命率が10%低下します。このため、誰にでも操作できるAEDの普及が急がれています。
自動体外式徐細動器(Automated External Defibrillator :AED)は、電気的なショックを与えて心臓の働きを取り戻すことを試みる医療機器です。
自動装置になっているので、医師ではなくても、誰でも取り扱うことができます。
覚えておこう、AEDの使い方
いざというときには、AEDを使えるようにしましょう。
では、実際の使い方は難しいのでしょうか?
実は驚くほど簡単です。なぜかというと、基本的にはAEDがアナウンスをしてくれるためです。あなたがやることは、衣類を脱がせて、見本通りの位置にパッドを貼るだけ。
あとは、AEDが判断してくれるので、その指示に従ってください。
1.電源を入れ、電極パッドを胸に貼る
2.心電図が出て、AEDの使用が必要かを装置が判断する
3.装置の指示に従って、スイッチを押すと電気ショックが伝わる
AEDの使い方は至って簡単ですが、このAEDの使用と一緒に、そばにいる人が心臓マッサージと人工呼吸を継続することが必要です。その為に、できることなら救命講習を受けておきたいものですね。
救急車が来るまでの間、あなたにできることがあります。
そばにいる人が命を救う!応急処置と蘇生率の関係とは? 救急車到着までにできること
心臓病は一度発作が起きると必ずしも生還できるとは限りません。一度の発作でそのまま亡くなってしまう可能性も否定できない病気なのです。
ここで大切なのが応急処置ですが、心筋梗塞における応急処置の重要性をいくつかのデータから見ていきましょう。
●救命曲線では4分で50%の可能性がある
心筋梗塞によって呼吸が停止した状態がどれくらい続くと蘇生の可能性がどれくらい低くなるか、というのを表したものが救命曲線です。
ポイントとなるのは呼吸が止まって4分後、蘇生の可能性は50%に落ち込みます。
その後、5分後には蘇生の可能性は25%になり、6分後や7分後には10%を下回るくらいになります。
このことから、呼吸停止4分までに蘇生できるかどうかは命の分かれ目と言っても過言ではないくらいということがわかります。
●救急車到着までは8分程度
総務省が発表したところによれば、平成24年度の救急車の現場到着までの時間は全国平均で8.3分となりました。
平成22年度以降は8分台が続いているのが特徴で、その後病院へ到着するまでにはさらに30分程度かかります。
呼吸停止とともに119番をしたとしても、待っている間に蘇生の可能性がどんどん低くなっていくのです。このことから応急処置は非常に重要と言えます。
誰かが心臓発作を起こして倒れた時、蘇生率は呼吸停止後4分で半分になってしまいます。
救急車がくると予測される8分後には10%にも満たない蘇生率ですので、救急車が来るまでにそばにいる人がどれだけ正しく応急処置できるかが重要です。
心臓マッサージや人工呼吸は一度講習を受ければ簡単に覚えられますし、AEDは機械からの音声指示があります。
普段から応急処置の流れはこういうもの、と知っておくだけでもその場で冷静に対処できる可能性が上がるので、一度消防署が開く応急処置講習などに行ってみるのもよいでしょう。
(参考:総務省 平成25年版救急・救助の概況 www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/h25/2512/251218_1houdou/01_houdoushiryou.pdf)
(Photo by::http://pixabay.com/)
著者: カラダノート編集部