気になる病気・症状
損傷した場所で違う!脊髄損傷の症状 -頚髄・胸髄編・腰髄・仙髄編-!脊髄損傷でもこんなことができる!損傷レベルと日常生活
脊髄の損傷は頚髄、胸髄、腰髄、仙髄のどこを損傷したかで、後遺症も症状もかなり異なります。頚髄、胸髄を損傷した場合の症状を見てみます。
●C1-C5では死の危険性
脊髄はC、T、L、Sというレベル分け(場所分け)がされており、C1からT1までが頚髄、T2からL1までが胸髄です。このうち、C1-C5という、頚髄でも上の方だと、呼吸筋と四肢の筋肉がマヒし、死亡することが多いです。
事故などの脊髄損傷での死亡はC1-C5損傷が多いです。
●C5-T1までは足麻痺
C5-T1の、頚髄の下の方は足や胴体の麻痺が出やすいです。C1-C5とは違って、呼吸筋が動かなくなるようなことは、まずありません。
●胸髄は感覚消失が特徴的
胸髄(T2-L1)を損傷した場合は、感覚消失が症状の代表となります。頚髄損傷のように麻痺もありますが、それよりも感覚消失の方が目立ちやすいです。
麻痺はいずれも、足と胴体のどちらかもしくは両方の麻痺となっています。T2-T4では乳首より下、T5-T8では胸郭から下、T9-T11ではへそから下、T12-L1では足の付け根から下の感覚がなくなります。
●しびれや脱力などの共通症状
頚髄・胸髄、そしてその他の2つの脊髄についても、脊髄損傷で共通症状として現れるのが、しびれや脱力感です。脊髄は背中にありますので、背中の痛みを感じる・訴える方も多いです。
また、脊髄損傷の原因の第1位は交通事故ということで、脊髄損傷の痛みが交通事故の怪我の痛みと混じりあうこともあります。
脊髄損傷は頸髄、胸髄、腰髄、仙髄のどこを損傷したかで症状が違い、頚髄の損傷がもっとも重症です。頚髄上部を損傷すると死に至る、呼吸器なしで生活できない可能性が高いです。
損傷した場所で違う!脊髄損傷の症状 -腰髄・仙髄編-
背中に長く伸びる脊髄は4つに分かれており、上から頸髄・胸髄・腰髄・仙髄という名前がついています。
このうち、腰骨でもある腰髄と仙髄の脊髄損傷の症状を見ていきます。
●死の可能性が低い腰髄・仙髄損傷
脊髄損傷の中でも致死率が高いのは頚髄損傷(首の損傷)で、呼吸筋が動かなくなることも大きな原因です。人間が生きるための基本である呼吸が出来ないので、呼吸器の補助なしでは生きていけないケースも多いです。
一方で、脊髄の中でも下の方にある腰髄や仙髄の場合、呼吸筋や足の麻痺の可能性は少ないです。脊髄損傷の重症度を考えた時には、どちらかといえば腰髄と仙髄損傷は軽症と言えるでしょう。
●足の筋力低下・しびれ
腰髄や仙髄を損傷したときに現れる代表的な症状は、足のしびれや筋力低下などです。腰髄のすぐ上にある胸髄損傷では、感覚消失が代表的な症状でしたが、腰髄・仙髄損傷では感覚は残ります。
ですが、すぐにスタスタと歩けるほど筋力はないですし、しびれで動かすのがなかなか難しいです。リハビリテーションを通して、徐々に足の機能を回復させていきます。
●膀胱の機能消失
脊髄損傷が重篤な場合、仙髄のS3-S5レベルを損傷した場合には、膀胱の機能消失が考えられます。
膀胱及び腸の機能がなくなることで、排尿や排便が自分の力では出来なくなってしまうのです。排泄機能を医療によって補う形で、日常生活を過ごしていかなければなりません。
腰髄・仙髄の損傷は脊髄損傷の中では、どちらかと言えば死の可能性が低い損傷部位です。とは言えども、リハビリテーションは必要ですし、排尿障害などが残ることもあります。
日本国内には10万人以上の脊髄損傷者(麻痺)がいると言われています。
脊髄損傷でもこんなことができる!損傷レベルと日常生活~胸髄・腰髄・仙髄の損傷~
交通事故や転落、スポーツ損傷で多い脊髄損傷。どのような障害が出るのは脊髄のどのレベルで損傷されたかに強く影響します。胸のあたりから、骨盤のあたりの仙骨までの損傷ではどのような機能が障害され、どの程度の能力の回復が見込めるのでしょうか。
C8-T1(頚髄8番目から胸髄1番目)
・上肢の機能は完全に残されていますが、体幹・下肢は動かすことができず、感覚も消失します
・車いすでの生活は自立できます
・車いすを操作して、多少の段差を乗り越えることもできます
・改造自動車を運転することが可能で、自分自身の車いすを自動車に積み込むこともできます
・入浴用の福祉用具は必要ですが、他の日常生活の動作は自助具なしでも自立できます
T2~T6
・体幹の機能が一部保たれるため、体のバランスが取りやすくなります
・環境を整えて、簡単な家事動作が可能になります
・車いす対応の台所や、浅めのドラム式洗濯機などのハード面での工夫も必要です
T7~L2(胸髄7番目から腰髄2番目)
・体幹の機能が保たれているため、体のバランスが安定します
・骨盤を引き上げる事が可能なので、太ももや骨盤までの長い装具をつけて、杖で歩行することが可能です
・車いす移動が実用的には使われます
・環境を整えることで家事や仕事が可能です
・車いすスポーツなども可能になります
L3~L4
・膝から下の装具をはいて、杖で歩行が可能なので、多少の制限はありますが、日常生活がほとんど受傷前どおり可能になります。
L5~S3(腰髄5番目から仙髄3番目)
・足首が動かしづらい、重だるい、力が入りにくいなどの症状はありますが、歩行が可能で、受傷前とほとんど同じ日常生活を送ることができます。
完全損傷の場合に起こる症状をまとめましたが、本人の年齢や性別、他の怪我がないか、環境の設定などによって、できることとできないことの個人差は大きくなります。
脊髄損傷でもこんなことができる!損傷レベルと日常生活動作~頚髄の損傷~
脊髄損傷は、脊髄のどの部分で損傷したかによって、どの筋肉が働くか、どこの感覚が残るか(残存機能)が変わってきます。ここでは、頸髄損傷、よく頚損(けいそん)と言われる首の部分の脊髄が損傷した場合についてまとめます。
C1~C3(頚髄1番目から頚髄3番目)
・呼吸障害があるため、人工呼吸器が必要になります
・首より下は全く動かず、感覚もないので身の回りの動作は全て介助です
・首や顔の筋肉は動かすことができます
・息を吹いて反応するスイッチ、唇や首の動きによって反応するスイッチなどを使って環境制御装置をコントロールします。
例:ナースコールを押す、テレビリモコン操作、音楽をつける、電気をつけるなど
・意思伝達装置などを使用してメールやインターネットを使うこともできます
・移動は特殊電動車いすで行います
・特殊寝台が必要です
C4
・自分で呼吸ができ、首をすぼめる運動はできますが、それ以外は難しいので身の回りの動作は全介助です
・棒のようなものを口にくわえたり、帽子の先に棒がついたようなヘッドポインターと呼ばれる道具を使うなどして、パソコンの操作や本のページを捲ったり、リモコンの操作ができます
・ベッドの背もたれをおこしたり、車いすに座ってセッティングしてもらえばストローなどで飲み物を飲むことができます
・移動は特殊電動車いすです
・寝具は電動ベットなどの特殊寝台が必要です
C5
・肘を少し曲げたり、手のひらをひっくり返したりなどの動作が一部可能です
・ベットの背もたれをおこしたり、車いすに座った状態で、セッティングをしてもらえば、上肢につける装具や自助具と言われる便利グッズなどを利用して食事や書字、一部の整容動作が可能です
・電動の車椅子か、手でこぐ部分(ハンドリム)を工夫した車いすで移動が可能です。ハンドリムを握ってこぐことができないので、専用の手袋をしてこぎます
・寝具は特殊寝台が必要です
・ベットから車いすへ移るときは、電動で体を移動させてくれるリフターがあると便利です
C6
・腕を少し上げたり、肘を曲げたり(伸ばせない)、手首を少しそらすことができます
・ベット上での寝返り、起き上がりなどの動作は環境を整えることで可能なひとも多いです
・上半身の着替えは可能です(ボタンなどは難しいので衣類の工夫が必要です)
・車いすでの移動が可能です
・一部の人はベットから車いすへの移動が可能です
・一部の人は改造自動車の運転が可能です
C7
・肩、肘、手首の動きがほとんどできます
・日常生活の動作は環境を整えることでほぼ自立を目指せます
・ベッドと車いすとの移動が可能です
・便器と車いすへの移動ができます
・入浴も環境を整えれば可能です
完全損傷の場合を想定していますが、右がC5,左がC6レベルなどではまた能力が変わってきます。
(Photo by: [http://www.ashinari.com/])
著者: カラダノート編集部