妊娠・出産
妊娠中の『レスベラトロール』摂取は胎児の膵臓疾患を招く?!その真偽について
赤ワインに多く含まれるポリフェノール『レスベラトロール』と言えば、現在では『高い抗酸化作用』や『エストロゲン作用』が確認されているなど、女性にとって非常に有益な物質ですが、妊娠中のサルにレスベラトロールを投与した実験では『胎児の膵臓に原因不明のしこりが生じた』との報告があり、ある米国の研究グループからは摂取を控えるよう注意喚起が行われています。実際のところは、どうなのでしょうか?以下では、その詳細について見て行きたいと思います。
レスベラトロールとは?
レスベラトロールとは、主に赤ワイン・赤ブドウの果皮・ぶどうジュース等に含まれるポリフェノールの一種で、主に高い抗酸化作用や、エストロゲン様作用・抗血小板作用が確認されています。近年では特に、糖尿病に対する血糖値の抑制作用に注目が集められています。
<レスベラトロール摂取による血糖改善効果とは?>
◆2型糖尿病患者に対する臨床試験Ⅰ(ハンガリー)
【試験内容】II型糖尿病患者19名 (試験群10名、平均57.9±7.9歳、ハンガリー) を対象に、レスベラトロール10 mg/日を4週間摂取させる。
【結果】インスリン抵抗性の改善 、および酸化ストレスの減少が認められたという予備的な報告がある 。
◆2型糖尿病患者に対する臨床試験Ⅱ(イラン)(Evid Based Complement Alternat Med. 2013)
【試験内容】2型糖尿病患者66名を対象に、1日あたり1gのレスベラトロール投与群と偽薬投与群の45日間の比較試験を行う。
【結果】レスベラトロール投与群では、『収縮期血圧の有意な低下、空腹時血糖値の有意な低下・HbA1cとインスリン抵抗性の有意な低下』が認められた。また、HDL値も有意に増加していた。一方、偽薬群では、空腹時血糖値の軽度上昇(悪化)・LDL値の増加が認められた。
⇒以上の結果から、レスベラトロール投与による2型糖尿病での糖代謝改善効果が示唆されます。
妊娠中のレスベラトロール摂取が、胎児に悪影響を与える?!
米国オレゴン国立霊長類研究センターを中心とした研究グループによると、以下の実験の結果が報告されました。
◆妊娠中のサルに対するレスベラトロール投与実験(米国オレゴン国立霊長類研究センター)
【実験内容】妊娠中の肥満サルを2群に分け、(1:レスベラトロールを含んだ西洋食を与えた群、2:レスベラトロールを含まない西洋食を与えた群)、それぞれを第三の群(3:レスベラトロールを含まない健康食を与えた群)と、母体と胎児に与える影響を比較した。超音波検査・内臓生検を行った。
【結果】レスベラトロール摂取群は、妊娠後期に体重減少・糖尿病改善・子宮動脈の血流量増加・胎盤炎症抑制・肝脂肪の減少が報告された。しかし、一方で胎児の膵臓に42%の肥大化が見られた。
この実験プロセスには、問題があったとの指摘も
しかし、一方で前述の実験環境には問題があったと言う指摘もあります。
<妊娠中のサルに対するレスベラトロール投与実験の問題点>
1)研究対象のサルが人工的に肥満にさせられており、また実験期間中はジャンクフードを持続的に食べさせられていた。
2)投与されたレスベラトロールが、通常摂取量の15倍量(レスベラトロール3.7g(食事1,000g当たり))で与えられていた。
最後に
レスベラトロールは、国立健康・栄養研究所の情報によると、妊娠中の摂取であっても、通常量・食品からの摂取であればおそらく問題はないとされています(ホルモン感受性疾患がある場合は禁忌)。前述の実験では、過剰量のレスベラトロール投与のため、悪影響が生じましたが、専門家によるとこの結果はレスベラトロ-ルに限らず、他のサプリメントの過剰摂取でも同様であると言われています。十分な情報が無い場合は特に、一度摂取前に医師に相談してみることが必要であると思います。
(photoby:pixabay)
著者: カラダノート編集部