気になる病気・症状
『脳梗塞・脳出血』の症状の違いって?脳出血の2種類の治療法とは?
脳卒中とは『脳梗塞・脳出血・くも膜下出血』の総称のことで、脳血管に異常が出ており素早く救命処置をしなければならないという点は同じですが、それぞれの一次救命の仕方は異なる面があります。
例えば、救急隊待機時の傷病者の体位については脳出血の場合は頭を高くするのが基本ですが、脳梗塞の場合は頭を低くしなければならないとされています。以下では、各傷病の特徴から対処法までを見て行きたいと思います。
【脳梗塞は『発症時に頭痛がない』のが特徴。『待機では頭を低く』】
脳梗塞には、脳血管の動脈硬化が原因で血管が詰まる『脳血栓』と、他の臓器でできた血栓が脳血管へ飛び、詰まる『脳塞栓』の2種類があります。
脳血栓
(前駆症状)一過性脳虚血発作(24時間以内に収まる一過性の脳梗塞)が起こる場合がある。
(症状)言語障害(ろれつが回らない)、神経症状の進行は緩やか(顔の片側がゆがむ・手の片方が挙がらない)、めまい、吐き気。
(発作時間帯)安静時・夜間(同じ姿勢でいることで、血栓が出来やすくなるため)
(血圧)高血圧(発症時一定せず)
(頭痛症状)ない、もしくはまれ(軽度)
(意識障害)ない、もしくはまれ(軽度)
(項部硬直(首の後部が硬直し前曲できない))陰性(-)
(年齢)多くは50歳以降
(原因)生活習慣病による動脈硬化を伴っていることが多い。また睡眠時無呼吸症候群など。
⇒待機時は、「回復体位(麻痺側を上にして横に寝かせ、顎の下に上側の手を入れ、後部に頭を反らし気道確保)」にする。
脳塞栓
(前駆症状)なし
(症状)突発的な神経症状(片麻痺などが数分以内に起こる)で、小梗塞なら急な改善あり。大梗塞なら重篤化することあり。
(発作時間帯)活動とは無関係
(血圧)正常
(頭痛症状)ない、もしくはまれ(軽度)
(意識障害)ない、もしくはまれ(軽度)
(項部硬直(首の後部が硬直し前曲できない))陰性(-)
(年齢)年齢には無関係
(原因)心臓疾患を患っている場合が多い(不整脈、弁膜疾患、心筋梗塞など)。
⇒待機時は、「回復体位」にする。
脳出血では『頭痛あり』が特徴。『待機時は頭を高く』
脳出血
(前駆症状)なし
(症状)片麻痺・言語障害・意識障害(嘔吐:小脳の場合)。急速に進行し数時間で悪化(但し出血量が少ない場合は、症状が軽い)。
(発作時間帯)活動時・昼間に多い(血圧が上がるため)
(血圧)通常高血圧症の既往がある。
(頭痛症状)あることが多い
(意識障害)ある
(項部硬直(首の後部が硬直し前曲できない))脳質が破れれば陽性(+)
(年齢)40歳以降
(原因)高血圧・脳血管の奇形・頭部外傷・脳腫瘍・出血傾向のある疾患など
⇒待機時は、「半座位(上体を軽く起こした体位)」にし、脳出血が止まりやすいよう横にはしない。
くも膜下出血
(前駆症状)なし
(症状)激しい頭痛の後、吐き気・嘔吐。重症で意識障害。血腫が出来た場合は片麻痺。
(発作時間帯)突発
(血圧)正常~高血圧
(頭痛症状バットで殴られたような激しい頭痛
(意識障害)ある
(項部硬直(首の後部が硬直し前曲できない))陽性(++)小出血では遅れる
(年齢)通常40-50歳代。動静脈奇形の場合:若年者もあり
(原因)脳動脈瘤の破裂による、また家族歴がある場合はリスクが高い。
⇒待機時は、「半座位」にする。
上記それぞれの症状は、あくまで一般的に起こりやすいとされているものであり、例外的な症状が出ることもあるため注意が必要です(若年性の脳梗塞では頭痛が起こる確率が高い)。また項部硬直の検査は、呼吸停止の危険性があるため個人では行わないようにすることが重要です。
外科手術が一般的 慢性硬膜下血腫の治療に漢方薬が有用?
慢性硬膜下血腫に対する治療は、外科手術が一般的とされています。内科療法でも、長期間入院したり通院したりして点滴をする、また副作用の強いステロイド剤を飲み続けるなどの方法がありますが、煩わしく、欠点もあるのであまり選択される方法ではありません。
しかし、最近慢性硬膜下血腫に有用であるという報告がされた漢方薬があるので紹介します。
五苓散(ゴレイサン)
これは、五苓散という一つの薬ではなく、日局タクシャ、ソウジュツ、チョレイ、ブクリョク、ケイヒを合わせた、混合生薬です。
この五苓散には東洋医学でいう「利水作用」があります。利水作用とは、「利尿作用」とは違い、余分な水分は取り去って、足りない部分は補う作用があるということです。慢性硬膜下血腫のような余分に溜まった水分を取り去ってくれる作用があると言われています。
最近の研究で、アクアポリンという水チャンネルが細胞膜の水の透過性を調整しているという報告があり、五苓散はこのアクアポリンに働きかけているのではないかと言われています。
柴苓湯(サイレイトウ)
柴苓湯は日局サイコ、タクシャ、ハンゲ、オウゴン、ソウジュツ、タイソウ、チョレイ、ニンジン、ブクリョウ、カンゾウ、ケイヒ、ショウキョウを合わせた混合生薬です。
柴苓湯は五苓散に小柴胡湯(ショウサイコトウ)を合わせたものです。小柴胡湯に入っているサイコには、ステロイドに似た作用があると言われています。慢性硬膜下血腫の薬物治療では、ステロイドが使用されることがありますが、長期間服用することで副作用が多いことが欠点と言えます。ステロイドには抗炎症作用があり、これが効果を発揮していると考えられます。
五苓散の利水作用にサイコで抗炎症作用が加わることで治療に効果的であると考えられています。
漢方薬が治療の選択肢の一つであったり、再発予防の手段の一つとなりえる可能性があります。
激しい頭痛を繰り返す?くも膜下出血の恐ろしい発作の再発予防のための治療とは
くも膜下出血は突然の激しい頭痛を発症する恐ろしい病気です。そのくも膜下出血を繰り返さないためにも、外科的な処置として、再出血を予防する処置がとられます。
初期治療
まず鎮痛・鎮静がはかられます。重症の場合は、呼吸機能、循環機能にも影響を与えるため注意して治療を行います。
再出血予防
開頭手術:主にくも膜下出血の外科治療では開頭でのクリッピング手術がとられています。
・出血して脳の表面にある血液も出来るだけ取り除きます
・脳の周りの余計な水分を出して、脳圧が高くなり過ぎたり低くなりすぎたりしないように管を留置しておきます
血管内治療
コイル塞栓術が開頭手術より有効であると判断された場合に選択されていることが多いようです
・術中、術後は抗凝固、抗血小板療法は必須
・特に長期的な再出血予防効果についてはデータを集めている段階です
保存的治療
過度の血圧上昇を抑えて、安静を保ちます。再出血予防の効果は低いです。
どっちがいいの?
・全身状態
・年齢
・合併症
・動脈瘤のある場所
・動脈瘤の大きさ
・動脈瘤の形
などを考慮して、医師が開頭手術がいいか、血管内治療がいいか、開頭手術でも血管内治療でも可能か、あるいはどちらの適応もないか判断されます。
手術中の脳の操作について
・発症した時点で脳に大きなダメージが加わっている
・脳を操作するため、操作によるダメージが出る場合がある。一過性もしくは永久的に片麻痺、言語障害などの症状が出る場合がある
・手術の操作中に脳動脈瘤から再出血を起こす場合がある
手術後の経過
術後2週間は不安定な状況が続き、その状況に応じた処置がとられます。
・脳血管攣縮(のうけっかんれんしゅく)
術後4~14日程度の間に脳血管が細くなって脳梗塞を起こすことがあります。約40~70%の人におこります。脳画像で起きていることがわかっても症状のでない人もいます。症状が出るものは約20~30%、うち3分の1は一過性、3分の1は脳梗塞によって後遺症残存、3分の1は死亡します。
・水頭症
脳の水分の吸収が悪化すると水頭症が起こるため、その水を流すためのシャント術が必要になることがあります
治療法はその時の状態に応じて、医師が適切に選択して行っています。どの治療にもメリット・デメリットがあり、危険性があることも理解しておく必要があります。
脳出血の2種類の治療法とは?
脳出血は脳内で血管が切れて出血した状態です。
普通の出血と違って問題があるのは流れ出た血の行き場がないということです。
脳内で出血した場合は血が耳や口から出てくるわけではなく、脳内で血腫となります。
脳出血の治療は薬物治療と手術の2種類に分かれています。
薬物治療では高血圧の状態を落ち着かせるための降圧薬の処方が主となります。
手術はチューブで血腫を引っ張り出す手術、頭蓋骨を開けて直接血腫を出す手術の2種類があります。
薬による治療
薬による治療ではまず第一に患者の体を安定させることが必要です。
脳出血の原因には高血圧がありますが、脳出血を起こすと高血圧状態が長く続くこともあります。
そのため、薬で一時的に高血圧を抑えて体の機能を整えます。
降圧薬による治療は初期段階のみで行われ、高血圧の状態が落ち着けば、薬で治療をする場合は多くありません。
手術をする
脳出血で手術が行われる事もあります。
ひとつが脳出血で脳の血管から出た血液の塊である血腫を取り除く手術です。
血腫によって脳が圧迫され、機能が失われるのを防ぐ役割があります。
手術の時間は2-3時間で、頭蓋骨を開けるタイプの手術です。
術後、感染などの合併症が起きる可能性もあり、慎重な経過観察が必要な手術でもあります。
その他に、血腫を小さくして吸い出す手術もあります。
薬で血腫を小さくしたあとに、チューブで血腫を吸い出すという手術です。
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著者: カラダノート編集部