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「HDAC6阻害剤」によるうつ病治療は神経変性のリスクがある?~「酪酸」の安全性は

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近年、抗がんや自己免疫の抑制に有望な薬の候補として「HDAC(=ヒストン脱アセチル化酵素)阻害剤」が注目を集めています。

HDAC阻害剤とは、遺伝子の発現を調整(ONとOFF)することで疾患の源流からアプローチが出来ると考えられている薬で、現在承認されている薬としては「ゾリンザ」「ファリーダック」などがあります。
 
また、現在HDAC阻害剤の新たな活用方法として考案されているものに「うつ病治療(HDAC6阻害)」がありますが、この治療法は一方では神経変性疾患を引き起こす可能性があるとして懸念されている面があります。
 
HDAC阻害剤のひとつである「酪酸」はクラス4まであるHDACのうちクラス2まで阻害する作用があるとされていますが、「酪酸菌」投与によって腸内産生した酪酸は、どのような代謝と副作用を示すと考えられているのでしょうか?
 

HDAC阻害剤とは?

ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC:エイチダック)阻害剤とは、DNAが糸巻きのように巻きついて収納されているヒストン(タンパク質)という物質に作用する薬で、この糸(=DNA)と糸巻き芯(=ヒストン)の電気的な結合力を「アセチル化」という化学修飾を行うことで緩め、遺伝子の翻訳を行う分子を物理的に接近可能にさせることで遺伝子発現を促進させるというものです。
 
遺伝子発現を促進させると、がん細胞へのアポトーシス(=自殺)誘導や、自己免疫疾患の抑制に関わるTreg細胞への分化を促す働きがあります。
 
酪酸もHDAC阻害剤の一種であり、主にFoxp3遺伝子(自己免疫疾患の抑制に関わる遺伝子)やp21やp27遺伝子(がん抑制に関わる遺伝子)への活性化作用が認められています。
 

<酪酸はどの程度腸管吸収される?>

酪酸は腸内細菌によって大腸内で産生されたのち、そのほとんどが血中移行せずに腸管上皮でエネルギーとして利用されると考えられていましたが、

腸内細菌学会の研究によれば、ブタ(人の腸管機能に近い)を対象とした実験では、盲腸内容物のn-酪酸濃度「18.2mmol/L(=18.2μmol/ml)」に対し、盲腸静脈血で先の濃度の約2%程度の検出、肝臓の門脈血で約0.07%の検出が見られたという報告があります。

また、ヒトに関しては、株式会社国際医薬品開発研究所の研究では、ヒト健常人では糞便1g当たり、「176μmol」のn-酪酸が、炎症性腸疾患では「86.9μmol」が検出されたとしていますので、仮にブタと同程度の腸管吸収率が認められるならば、以下の血中濃度が推測されます。

(※単純計算した結果であり、誤りである可能性があります)

■盲腸静脈血のn-酪酸濃度

・健常人
約3μmol/ml(=約3000μmol/l)前後
・炎症性腸疾患者
約2μmol/ml(=約2000μmol/l)前後

■門脈血のn-酪酸濃度

・健常人
約0.12μmol/ml(=約120μmol/l)前後
・炎症性腸疾患者
約0.06μmol/ml(=約60μmol/l)前後

うつ病治療に繋がるという「HDAC6阻害」はなぜ問題なのか?

現在HDAC阻害剤の使用で懸念されている副作用が「HDAC6阻害」に関するものです。HDAC6は脳神経細胞に多く発現のある酵素で、「神経細胞の定期的な破壊と安定化」に関わり、壊された部分を伸張部分に持っていくことで神経の成長に繋がっているとされています。
 
しかし、HDAC6を阻害すると神経細胞が過剰に安定化して伸張できず、神経変性疾患に繋がる可能性もあると考えられています。
 
日本生化学会やその他海外研究によれば、HDAC6活性低下(HDAC6阻害剤のtubacinなどによる)が神経細胞の機能障害を引き起こすとも報告されています(下記ウェブサイト参照)
 
ただ、酪酸・βヒドロキシ酪酸はともにHDAC6には作用しないことが分かっており、影響はないものと考えられています。
 

最後に

その他の酪酸の副作用としては、「胃腸症状」が報告されていますが、未だ不明な部分が多いようです。

他のHDAC阻害剤では「血小板減少」や「免疫抑制」作用も報告があることから、今後仮に治療薬として実用化されるならば、さらに安全性を検証することが必要となりそうです。
(参照ウェブサイト:日本生化学会PubMedコロンビア大学
(photoby:pixabay

著者: あせちるこりんさん

本記事は、2016-08-01掲載時点の情報となります。
記事内容について実行の際には、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


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