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HDAC阻害剤(がん・自己免疫疾患)としての「酪酸」は、p53遺伝子へ悪影響を及ぼすか?

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近年、HDAC阻害剤のひとつである酪酸が注目されています。酪酸は、「p53(がん抑制に関わる遺伝子)によって合成されるシグナル蛋白(p21)」や「foxp3(制御性T細胞分化に関わる遺伝子)」を発現させる働きを持つため、抗がん剤や自己免疫疾患の治療補助薬としての効果に期待が高まっています。
 
しかし、その一方で海外の研究によると遺伝子変異によって「p53」を過剰に活性化されたマウスでは、細胞老化が促進し、寿命の短縮化・臓器の縮小が起こることも明らかになっており、p53遺伝子の活性化は必ずしも良い結果ばかりをもたらさないのではないか、という意見も見られます。
 
ただ、一般的にはHDAC阻害剤による遺伝子の「修飾」は、疾患発生型の「変異」とは異なって生体に不必要なアポトーシスや細胞周期の停止を永続的に(=細胞老化)させるような作用はないものと考えられているようです。
 

p53が過剰活性されると、老化促進される仕組とは?

p53遺伝子活性(p21蛋白増加)によって、老化が促進されると示されたのは次の研究によるものです。
 

■p53活性によって、マウスの老化現象が見られたという実験(Nature 2002; 415: 45-53)

【要約】

・癌抑制遺伝子p53が異常に活性化したマウス(第1~第6エクソンが欠失したマウス)を作成したところ、生後1年ほど(ヒトの中年期に相当)で老化現象が見られた。
・具体的には、「腫瘍が少ない/体重と筋肉量が少ない/骨粗しょう症/創傷治癒力の低下/野生型よりも寿命が2割も短かい」という特徴を持っていた。
・研究者によれば、「変異マウスは身体を維持する必要な細胞までも抑制し、個体の老化現象を引き起こす」としている。
 
⇒これらの結果は、「p53遺伝子に(過剰活性の方向に)変異があった場合は、必要な細胞にまでアポトーシスを起こす可能性がある」ことが示されています。
 

正常細胞では、異常なアポトーシスは起こらない?

ただ、先の実験のような結果は「(疾患が発生するタイプの)遺伝子変異」によるものであり、この場合正常な細胞の制御プログラムが働いていないために引き起こされたものであると考えられます。
 
一方で、HDAC阻害剤による「遺伝子修飾」は遺伝子発現を活性化させるものの、プログラムを異常にするものではなく、またアポトーシス機能は厳重に制御されているためp53活性による寿命の短縮化は引き起こされないものと考えられています。
 
□p53発現は何重ものメカニズムによって厳重に制御されている
□p53は正常細胞では、不活発な状態にある
□p53・p21ともに発現後は速やかに分解される(p53の半減期は20分)
□p53による細胞周期の停止(チェックポイント機能)は、40時間継続される
□p21自体はアポトーシスに関与せず、p53がチェックポイント制御とは別の機構でアポトーシスを起こしているため、過剰なp21活性が、過剰なアポトーシスを起こすということはないと思われる
□そもそも、変異していない正常細胞が修復可能なケースでアポトーシスを起こさない
□ただ、HDAC阻害剤添加後(高アセチル化状態)に、細胞に紫外線照射をすると、生成される傷(ピリミジンダイマー)の修復が起こりにくくなる
□酪酸はそのほとんどが腸上皮で消費されるため、紫外線による影響はほとんどないものと思われる
 

HDAC阻害剤によってアポトーシス促進となる条件は?

ただ、以下ようなDNAが損傷した状態において、p53・p21などのがん抑制遺伝子が高発現すると、アポトーシスが頻回に生じる可能性があります。
 
□高齢化・遺伝による早老化(テロメア短縮によってDNAの保護機能が低下している)
□活性酸素への曝露(喫煙・飲酒・過度な運動・食事・放射線・紫外線・感染症など)
□抗がん剤などのDNA損傷剤の使用(DNAが激しく損傷する)
□免疫抑制剤などの代謝拮抗剤の使用(細胞増殖の停止)
□アルツハイマー病などの異常タンパクの蓄積(微小管上での神経伸張に必要な物質運搬の阻害)
□DNA修復遺伝子hOGG1の多型(DNA修復能が低下する)
 

最後に

このように、HDAC阻害剤としての酪酸使用が、p21などの物質に関連して必要以上のアポトーシスを引き起こすということはなく、現在でも重大な副作用の報告はないとされています。
ただ、HDAC阻害剤はまだ明らかにされていない点が多く、今後の研究結果を継続して追っていく必要がありそうです。
(photoby:pixabay

著者: あせちるこりんさん

本記事は、2016-08-01掲載時点の情報となります。
記事内容について実行の際には、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


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