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難治性てんかん治療に有効?「スーパー糖質制限食」とは~大人のてんかん治療の注意点~

 

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近年の岡山大学の研究で、てんかんへの「ケトン食療法」の作用機序が解明され、抗てんかん薬が効かない難治例や何らかの理由で薬が使用できない場合にも、その代替療法として高い効果が期待できることが明らかにされています。

 

しかし、古典的ケトン食療法は厳しい糖質制限により大きな負担がかかるため、これをいくらか緩和した「修正アトキンス食」や「スーパー糖質制限食」といった方法も存在し、効果についても(程度の差はありますが)有効性はあると考えられています。

 

岡山大学により明らかにされた「ケトン食療法の機序」は?

岡山大学の研究によれば、ケトン体のてんかん発作抑制の機序とは「飢餓により体内で発生するケトン体が、クロールイオン(Cl?)と小胞型グルタミン酸トランスポーターの結合部位において競合し、グルタミン酸の輸送を阻害したことによる」と述べられています。

 

「ケトン食」は、抗てんかん薬と同等の効果がある?

ケトン体は、脂肪酸が分解されて作られる「短鎖脂肪酸の一種」ですが、糖が枯渇状態にあるなど(飢餓)の緊急時に、すばやく脳へエネルギー補給するという「バックアップシステム」として機能を有しています。

 

古典的ケトン食によるてんかんへの効果は、オーストリアのウィーンメディカルセンターで行われた臨床試験でも、「抗てんかん薬以上の効果が見られた」と結論付けられています。

 

また、個人のウェブサイトを運営されている精神科医の方によれば、国内・海外の文献に以下の研究報告があったと紹介されています。

 

■海外研究では「ミトコンドリア増加」「神経保護」「けいれん減少」が報告されている

・動物実験では、ケトン食によってミトコンドリアの数が増加(脳が疲労しにくくなる)することが明らかになっている。

 

・また、それ自体が抗けいれん作用を有している(けいれん発作の軽減)。

 

・これは、神経細胞が発作の間に増加するエネルギー需要にすばやく供給し、安定した状態を保つことによる(=神経保護効果を発揮するといえる)。

 

■岡山大学の研究でも、脳のグルタミン酸を減少したという報告がある

・岡山大学の森山芳則教授の研究では、脳神経細胞のグルタミン酸濃度をケトン体が減少させたと報告している。

 

・脳の興奮を低下させる可能性がある。

 

■自閉症や双極・認知症でも効果が確認されている

・自閉症では、児童の発作頻度が減少し、行動の改善(学習能力や社会的スキルの向上)を示した。

 

・その他にも、双極性障害、アルツハイマー病、脳腫瘍など、てんかん以外の疾患にも利用されている。

 

「スーパー糖質制限食」は、てんかんにも有効?

スーパー糖質制限食とは、糖尿病専門医である江部医師によって考案された新しいケトン食療法で、糖尿病の方だけでなく、てんかん患者さんにも有効性が合ったと報告されています。ルールは簡単であり、「糖質を20g/食×3食分=60g以内」に抑え、その他の脂質・タンパク質は制限を設けない、というものです。

 

「修正アトキンス食」のルールである、(成人で)糖質摂取量15g/日以下に抑えるというものより制限はかなり緩和されていますが、この場合でも江部医師やその他個人の方のウェブサイトなどにてんかんに有効であったという記述がいくつか見られます。

 

スーパー糖質制限食のてんかんへのエビデンスは確立していませんが、修正アトキンス食でも厳しい、といった場合、一度試してみる価値はあるかもしれません。

 

 

ケトン食療法は「骨粗しょう症・動脈硬化」をもたらす、という説は本当?

古典的ケトン食療法や修正アトキンズ療法とは、糖質を5~10%程度に制限し、てんかん発作の原因であるグルタミン酸の過剰放出を抑えるという食事療法です。

この食事療法により、てんかん患者さんの50%程度に有効性が認められ、抗てんかん薬の効かない難治性てんかんにも有効であったとする報告がいくつも見られています。

そして最近ではさらに糖質制限を緩めた「スーパー糖質制限食」という療法も登場し、これによってもてんかん治療に効果があったという声がいくつか見られます。

しかしその一方で、スーパー糖質制限食を長期的に行うことで「動脈硬化」「脳・心血管疾患」に発展する可能性があるという見解も一部に見られます。

この問題に対し、糖尿病専門医の江部医師によれば、自身で13年間糖質制限を行った結果、血液検査値が正常であること、また海外の長期臨床試験で安全性が確認されたエビデンスがいくつもあること、などが挙げられています。

 

ケトン食が動脈硬化に繋がるという説とは?

ケトン食が動脈硬化に繋がるという説のメカニズムは以下であるとされています。

 

<骨粗しょう症の機序は?>

「糖質」から「ケトン体」への「エネルギー基質の転換」が起こらない

 

 

糖質を主たるエネルギー源としたままで、その摂取を減らせば、アミノ酸からの糖新生を増やさざるを得なくなる

 

 

その結果、たんぱく質の不足が生じる

 

 

たんぱく質の不足が、筋肉量、骨量の減少に繋がる

 

<動脈硬化の機序は?>

脂質異常症では、血中脂質の処理能力が低下している(脂肪組織のLPL活性が低下)状態

 

 

「ある量以上」の糖質を摂取すれば、摂取した脂質(中性脂肪)の処理は激減する 

 

 

糖質摂取を制限して、かつ、摂取エネルギーを消費量に見合うだけ確保するには、脂質摂取の増加が必須となる

 

 

「糖質制限」では、脂質摂取量が増え、なおかつ、「ある量以上」の糖質を摂取するため、脂質異常症が進行する可能性はありえる

 

ケトン食によって、どの程度まで血中ケトン値は上がる?

江部医師が自身のウェブサイトで公開されている検査値によれば、動脈硬化の指標となるLDLコレステロール・中性脂肪値は正常、HDLコレステロールはやや上昇(107mg/dl:正常値40~98)であるとされています。

また、骨粗しょう症になる原因として考えられているのは、「古典的ケトン食よりもはるかに緩い糖質制限では、糖質→ケトン体へのエネルギー転換が起こらず、その代償としてタンパク質が分解される」ことによると考えられていますが、これに対しても、検査値(ケトン値上昇)から、脂肪酸からケトン体確かなエネルギー転換が見られると反論されています。

 

<江部医師が公開されている検査値>

■ケトン体:1146μM/L(26~122)⇒糖質制限食中は生理的で正常値

 

■アセト酢酸:179μM/L(13~69)

 

■3-ヒドロキシ酪酸:967μM/L(76以下)

 

また、スーパー糖質制限食を行って数ヶ月はLDL・総コレステロール・尿酸・尿中ケトンなどが高値となる場合があるが、これに関しても一過性のもので時間が経過すれば落ち着くことが多い、とも述べられています。その他、海外臨床試験の結果からも、安全性は高いと考えられそうですが、それでもやはり、定期的に血液検査を行い異常値が無いか把握しておくことは変わらず重要と言えそうです。

 

 

抗てんかん薬デパケンの副作用「脱毛症」、L-カルニチンで抑制できる可能性がある?

抗てんかん薬の一種であるデパケン(バルプロ酸)の副作用にはアンモニア血症から脱毛症まで多様な症状が報告されていますが、これらの多くがミトコンドリア機能が阻害されることによる「ミトコンドリア障害」が関連しているという見解があります。

 

中でも脱毛症に関しては1/1000と発生頻度は低く、健康には悪影響を与えないものの、患者にとっては悩ましい問題のひとつとなります。

 

この副作用がビタミン様物質のひとつである「カルニチン」によって防ぐことができる可能性が示唆されています。

 

デパケンはカルニチンを排泄してしまう?

デパケン(バルプロ酸)は、8個の炭素からなる分枝鎖脂肪酸の一種です。代謝されると「プロピオン酸」という脂肪酸になり、ミトコンドリアにおいてカルバモイルリン酸シンセターゼという酵素(アンモニア代謝酵素)を阻害することから、高アンモニア血症の副作用が生じることが知られています。

 

また、その他にもカルニチンとの親和性が強いことから、結合して排泄され、二次性のカルニチン欠乏症となる可能性があります。

 

カルニチン不足で細胞の活動性が低下する可能性

カルニチンは脂肪酸をミトコンドリア内へと輸送する役割を持っていることから、カルニチンが欠乏するとエネルギー供給能が低下します。

 

それによって代謝活動だけでなく、細胞分裂の活動も低下し、特に細胞分裂速度の速い毛髪においては、影響を受けやすくなると考えられています。

■デパケン服用で、好気的代謝とアンモニア代謝阻害が示唆されたという調査結果

(名古屋市立大学医学部小児科/脳と発達Vol. 17 (1985) No. 6 P 507-513)

 

【対象】

名古屋市立大学小児科外来通院中の抗てんかん薬服用患者38名(2~17歳)

 

【調査内容】

対象をデパケン単剤群9名と、デパケン+他の抗てんかん薬との併用群11名、他の抗てんかん薬のみの対照群18名の3群に分けた。多種類の物質の血中の変動につき比較検討した。

 

【結果】

・デパケン単剤群では、血中アンモニア値/カルニチン値には有意差が認められなかったが、乳酸/ピルビン酸/アミノ酸値では対象群より有意差を示した。

・デパケン+他てんかん薬併用群では、血中アンモニア値/カルニチン値には有意差が認められなかったが、ピルビン酸/アミノ酸値では対象群より有意差を示した。

・血中アンモニアと血清遊離型カルニチンの間には反比例の相関傾向を認められた。

⇒デパケン服用により、TCA回路及び尿素回路が阻害されている可能性が示唆された。

 

ミトコンドリア呼吸の阻害で、「髪の再生遅延」が起こることが明らかに

またさらに、毛髪の成長に関わる細胞に対して、人為的にミトコンドリア呼吸の阻害を行ったところ、毛髪の再生が遅延したという研究結果も報告されています。

 

毛髪は、細胞分裂の速度が速いため、エネルギー供給状態が低下するとその影響を受けやすいと考えられています。

 

以下の研究では、毛包幹細胞(※)にミトコンドリア呼吸阻害が生じたとき、髪の再生遅延が発生したことが明らかにされています。

 

(※毛包幹細胞とは・・・バルジ領域という毛包部分に存在する毛髪の成長を補助する細胞。細胞増殖因子を産生する。近年の研究では、毛乳頭や毛母細胞だけでなく、毛包幹細胞を併せた働きが毛髪の成長に重要と考えられている)

 

■ミトコンドリア呼吸の機能不全は、髪の再生を遅延させるという研究結果

(PMID:27168957)

 

【実験内容】

毛包幹細胞とマトリックス細胞におけるミトコンドリア活動期と休止期の違いについて、スーパーオキシドジスムターゼ2(SOD2:過剰発現させた細胞はG1期からS期の移行能が高まるとされる)の発現量とピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)発現量について測定した。

 

【結果】

・毛包幹細胞の分化の際に、PDHが増加し(TCAサイクルを活性化させる)、SOD2が強化されていた(細胞増殖能が高まる)。

・毛包幹細胞の分化の際に、ミトコンドリアは高いエネルギー供給によって好気呼吸が高まり、より活性化していた。

・一方で、分化毛包細胞にミトコンドリア呼吸の阻害を行うと、髪の損傷時に行われる再生過程が遅延した。

 

このように、ミトコンドリアの呼吸阻害が髪の脱毛症につながる可能性が示唆されています。

 

カルニチン投与は、理論的にはデパケン誘発性のTCA回路の障害を改善させるものと考えられているようですが、それが直接脱毛症改善に結びつくかという研究や臨床試験は現時点では見つけることができませんでした。

 

ただ、カルニチンが欠乏するとその他の細胞(心筋細胞など)の呼吸鎖機能障害を起こす可能性があるという見解もあり、デパケン服用時にはカルニチンを併せて摂るべきであるのかもしれません。

 

 

薬の継続が大切!大人のてんかん治療の注意点

一般的に大人のてんかんの完治は難しいとされています。てんかんは脳に異常があることによって生じる疾患ですが、子どもの場合、この脳が成長と共に正常に変化していくため、てんかんが消えていく可能性があります。

 

しかし大人の場合、でき上がってしまった脳は変化していきませんから、完治が難しいのです。

 

大人のてんかん治療

てんかんの治療は根本的に治す方法はありません。ですから、薬を服用することによっててんかん発作を抑えるしかありません。

 

大人の場合のてんかん治療は、子どもの治療と変わらず、薬を服用することによっててんかん発作を抑えることになるのです。しかし、大人の治療の場合はこの薬についても以下のような問題があります。

 

薬を継続して飲むこと

薬を継続して飲むことはそれなりにお金もかかりますし、精神的にもこれがいつまで続くのかと負担になります。発作が見られない状態が長く続くと特に、発作が出ていないのにいつまで飲み続けるのかと思ってしまいます。

 

しかし発作が出ていない状態は、薬を服用しているからこその状態です。分かっていても、何だかうんざりしてしまうという気持ちが働きます。ですから患者さんの中には勝手に薬の服用をやめてしまって、再発して失敗するケースや、その失敗を繰り返した結果、薬をやめるのが怖くなってしまうというケースがあります。

 

てんかんの再発

あるデータでは、薬の服用によって2年以上発作がない場合で、服薬を中止した後の発作の再発率は1年後で約25%、2年後で約30%とかなり高い確率で再発することが分かっています。

 

こうした再発に関する危険因子として、てんかんの発病年齢が青年以降と比較的高いことや、発作の頻度が比較的高いことなどがあるようです。

 

服薬をやめるには医師との連携のもと、定期的な脳波の検査を続けていくことが望ましいです。

(photoby:pixabay

著者: カラダノート編集部

本記事は、2017-04-04掲載時点の情報となります。
記事内容について実行の際には、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


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