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抗てんかん薬デパケンの副作用「脱毛症」、L-カルニチンで抑制できる可能性がある?

medications-257344_640.jpg抗てんかん薬の一種であるデパケン(バルプロ酸)の副作用にはアンモニア血症から脱毛症まで多様な症状が報告されていますが、これらの多くがミトコンドリア機能が阻害されることによる「ミトコンドリア障害」が関連しているという見解があります。

 

中でも脱毛症に関しては1/1000と発生頻度は低く、健康には悪影響を与えないものの、患者にとっては悩ましい問題のひとつとなります。

この副作用がビタミン様物質のひとつである「カルニチン」によって防ぐことができる可能性が示唆されています。

 

デパケンはカルニチンを排泄してしまう?

デパケン(バルプロ酸)は、8個の炭素からなる分枝鎖脂肪酸の一種です。代謝されると「プロピオン酸」という脂肪酸になり、ミトコンドリアにおいてカルバモイルリン酸シンセターゼという酵素(アンモニア代謝酵素)を阻害することから、高アンモニア血症の副作用が生じることが知られています。

 

また、その他にもカルニチンとの親和性が強いことから、結合して排泄され、二次性のカルニチン欠乏症となる可能性があります。

 

カルニチン不足で細胞の活動性が低下する可能性

カルニチンは脂肪酸をミトコンドリア内へと輸送する役割を持っていることから、カルニチンが欠乏するとエネルギー供給能が低下します。

それによって代謝活動だけでなく、細胞分裂の活動も低下し、特に細胞分裂速度の速い毛髪においては、影響を受けやすくなると考えられています。

 

■デパケン服用で、好気的代謝とアンモニア代謝阻害が示唆されたという調査結果

(名古屋市立大学医学部小児科/脳と発達Vol. 17 (1985) No. 6 P 507-513)

 

【対象】

名古屋市立大学小児科外来通院中の抗てんかん薬服用患者38名(2~17歳)

 

【調査内容】

対象をデパケン単剤群9名と、デパケン+他の抗てんかん薬との併用群11名、他の抗てんかん薬のみの対照群18名の3群に分けた。多種類の物質の血中の変動につき比較検討した。

 

【結果】

・デパケン単剤群では、血中アンモニア値/カルニチン値には有意差が認められなかったが、乳酸/ピルビン酸/アミノ酸値では対象群より有意差を示した。

・デパケン+他てんかん薬併用群では、血中アンモニア値/カルニチン値には有意差が認められなかったが、ピルビン酸/アミノ酸値では対象群より有意差を示した。

・血中アンモニアと血清遊離型カルニチンの間には反比例の相関傾向を認められた。

 

⇒デパケン服用により、TCA回路及び尿素回路が阻害されている可能性が示唆された。

 

ミトコンドリア呼吸の阻害で、「髪の再生遅延」が起こることが明らかに

またさらに、毛髪の成長に関わる細胞に対して、人為的にミトコンドリア呼吸の阻害を行ったところ、毛髪の再生が遅延したという研究結果も報告されています。

 

毛髪は、細胞分裂の速度が速いため、エネルギー供給状態が低下するとその影響を受けやすいと考えられています。

 

以下の研究では、毛包幹細胞(※)にミトコンドリア呼吸阻害が生じたとき、髪の再生遅延が発生したことが明らかにされています。

 

(※毛包幹細胞とは・・・バルジ領域という毛包部分に存在する毛髪の成長を補助する細胞。細胞増殖因子を産生する。近年の研究では、毛乳頭や毛母細胞だけでなく、毛包幹細胞を併せた働きが毛髪の成長に重要と考えられている)

 

■ミトコンドリア呼吸の機能不全は、髪の再生を遅延させるという研究結果

(PMID:27168957)

 

【実験内容】

毛包幹細胞とマトリックス細胞におけるミトコンドリア活動期と休止期の違いについて、スーパーオキシドジスムターゼ2(SOD2:過剰発現させた細胞はG1期からS期の移行能が高まるとされる)の発現量とピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)発現量について測定した。

 

【結果】

・毛包幹細胞の分化の際に、PDHが増加し(TCAサイクルを活性化させる)、SOD2が強化されていた(細胞増殖能が高まる)。

・毛包幹細胞の分化の際に、ミトコンドリアは高いエネルギー供給によって好気呼吸が高まり、より活性化していた。

・一方で、分化毛包細胞にミトコンドリア呼吸の阻害を行うと、髪の損傷時に行われる再生過程が遅延した。

 

このように、ミトコンドリアの呼吸阻害が髪の脱毛症につながる可能性が示唆されています。

 

カルニチン投与は、理論的にはデパケン誘発性のTCA回路の障害を改善させるものと考えられているようですが、それが直接脱毛症改善に結びつくかという研究や臨床試験は現時点では見つけることができませんでした。

 

ただ、カルニチンが欠乏するとその他の細胞(心筋細胞など)の呼吸鎖機能障害を起こす可能性があるという見解もあり、デパケン服用時にはカルニチンを併せて摂るべきであるのかもしれません。

(photoby:pixabay

著者: あせちるこりんさん

本記事は、2016-08-03掲載時点の情報となります。
記事内容について実行の際には、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


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