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多発性硬化症の視神経炎に、抗ヒスタミン薬「クレマスチン」が有効である可能性?

drug%20cough.jpg近年の米国神経学会(AAN)により、抗アレルギー薬や風邪薬に含まれる第一世代抗ヒスタミン薬の「クレマスチンフマル酸塩(クレマスチン)」が多発性硬化症(MS)による視神経炎を回復させる可能性があることが報告されました。

 

これは小規模なプラセボ対照クロスオーバー試験によるもので、今後さらに大規模臨床試験が必要とされているものの、「MSの慢性脱髄を回復させる可能性を示した初の試験」として期待がもたれています。

 

多発性硬化症とは、「運動・感覚・認知・視覚」に関わる脱髄疾患

MSは中枢神経系の脱髄疾患(※)の一つで、脳(大脳・小脳・脳幹)や脊髄、視神経など様々な部分に、繰り返し脱髄や炎症を発生するというものです。

 

具体的な症状としては、運動障害や感覚障害、認知機能障害、視神経炎があります。炎症症状が悪化すると脱髄だけでなく、不可逆性の軸索変性にまで進展することがあり、早期の予防策が重要と考えられています。

 

(※脱髄とは・・・神経は電線のような2重構造をしており、軸(軸策)と外側のチューブ(髄鞘)で成り立っています。電線がショートしないように絶縁体で覆われ、これによって正常に電気活動が行われるのですが、MSでは免疫細胞の攻撃によりこのチューブが壊れて中の電線がむきし状態になっています)

 

視神経炎の症状

・視力低下(2~3日以内に、重症(0.1以下)になる)

・中心暗点(視野の真中が暗くなる)

・色覚異常(色が判りにくい)

・中心CFF値低下(チラツキが判りにくい)

・瞳孔異常(瞳孔の対光反応の障害がある)

・眼底異常(視神経乳頭の浮腫、萎縮)

・眼球後部痛(眼を動かすと奥が痛い)

 

「抗ヒスタミン薬」で神経鞘が修復されたというヒト臨床試験

以下のヒトを対象とした小規模臨床試験では、抗ヒスタミン薬である「クレマスチン」投与で、MSの視神経脱髄がいくらか改善したことが報告されています。

 

■クレマスチン投与により、ミエリン修復が示唆されたという臨床試験

(American Academy of Neurology’s 68th Annual Meeting in Vancouver, Canada, April 15 to 21, 2016. )

 

【対象】

平均罹病期間5年、平均年齢40歳、軽度の症状を有し慢性化した視神経炎を有するMS患者50例

 

【試験内容】

被験者に対し、クレマスチンまたはプラセボが交互に3カ月、2カ月の期間投与された。

 

【結果】

・クレマスチン投与時にはプラセボ投与時に比べ、視覚誘発電位が平均2ミリ秒短縮した(ミエリン修復のバイオマーカー)。

・わずかではあるが視覚野の電位変化に改善が認められた。

・また、同試験において同薬服用中の疲労感が報告された。

 

⇒「同薬投与時に見られた視力障害の改善は大きなものではないが、薬剤でMSによる障害が回復できる可能性が確認された」と述べられている。

 

クレマスチンによる脱髄回復効果は、「遺伝子発現調整」によるもの

また他の海外研究によれば、クレマスチンが脱髄を回復させる機序には、遺伝子発現の制御を調整する「エピジェネティックス」という機構が関連していることが報告されています。

 

■クレマスチンはエピジェネティックな機序により、再ミエリン化を促進させたというマウス実験

(PMID: 26791223)

 

【実験内容】

社会的回避行動を示すマウスへの2週間のクレマスチン経口投与を行った。

 

【結果】

・クレマスチンは長期の社会的孤立を受けたマウスの社会的回避行動を改善させた。

・エピジェネティックな変化とオリゴデンドロサイト前駆細胞の分化により再ミエリン化が救助された。

・前頭前皮質におけるヒストンメチル化(H3K9me3:ヘテロクロマチンのマーカーで遺伝子発現抑制状態を示す)の高い抑制を誘導した。

 

⇒これらは、髄鞘形成促進によりうつ病などの疾患に有効である可能性がある。

 

このように、クレマスチンは脱髄病変をいくらか改善させる可能性があることが示されました。クレマスチンは1970年に発売された薬であるため、副作用に関しても長期間のデータがあり、新薬よりも安全に使用できる可能性が高いようです。

 

今後、さらなる研究によって視神経以外の脱髄病変異に対する有効性が示されることを期待したいですね。

(photoby:pixabay)

著者: あせちるこりんさん

本記事は、2016-08-03掲載時点の情報となります。
記事内容について実行の際には、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


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