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統合失調症の神経脱髄が改善される可能性?抗ヒスタミン薬「クレマスチン」による効果とは

medications-257344_640.jpg近年、統合失調症の発症原因の解明に関する研究が進められています。

 

岐阜薬科大学の研究では、ある特定の遺伝子異常(HB-EGF:細胞の分化・増殖に関わる細胞増殖因子の遺伝子で、欠損すると情報伝達神経が20-40%減少する)が指摘されており、また自然科学研究機構生理学研究所の研究では、「グリア細胞(オリゴデンドロサイト)」を分化させる遺伝子に異常があったことが報告されています。

 

そして、海外のマウス実験においては、抗ヒスタミン薬であるクレマスチンに脱髄修復作用があり、これによって統合失調症様症状がいくらか改善される可能性が示唆されています。

 

抗ヒスタミン薬「クレマスチン」は、遺伝子発現を誘導させる

クレマスチンとは、抗ヒスタミン薬の一種であり、アレルギー性鼻炎の治療薬として使用されている薬です。鼻炎薬としての作用機序は、ヒスタミンとH1受容体の阻害によるものですが、最近注目されている「再ミエリン化(脱髄の回復)」作用に関しては、遺伝子発現を制御する「エピジェネティックス」という機序によって行われているとされています。

 

■クレマスチン投与はエピジェネティックな機序により再ミエリン化を促進したとするマウス実験

(PMID: 26791223)

 

【実験内容】

社会的回避行動を示すマウスへの2週間のクレマスチン経口投与を行った。

 

【結果】

・クレマスチンは長期の社会的孤立を受けたマウスの社会的回避行動を改善させた。

・エピジェネティックな変化とオリゴデンドロサイト前駆細胞の分化により再ミエリン化が救助された。

・前頭前皮質におけるヒストンメチル化(H3K9me3:ヘテロクロマチンのマーカーで遺伝子発現抑制状態を示す)の高い抑制を誘導した。

 

⇒これらは、髄鞘形成促進によりうつ病などの疾患に有効である可能性が示唆されている。

 

クレマスチン投与で、統合失調症様症状が改善したという報告

また前述のように、マウス実験の段階ではあるものの、クレマスチン投与によって統合失調症様症状が改善した(オープンフィールド試験・Y-迷路試験(※))という報告もあります。

 

(※オープンフィールド試験における自発行動の低下は、統合失調症の陰性症状を現し、Y-迷路試験における進入回数の増加は、統合失調症の陽性症状を現す)

 

■クレマスチン投与で、ミエリン修復が大幅に増加したとするマウス実験

(PMID: 26253956)

 

【対象】

クプリゾンの6週間曝露で統合失調様症状を示したマウス(オープンフィールド試験における探索行動の減少とY-迷路への進入回数の増加、および脳皮質、脳梁における脱髄所見)

 

【実験内容】

クプリゾンを中止した後、マウスにクレマスチン投与を行った(10mg/kg×1回/日×3週間)

 

【結果】

・増加した成熟オリゴデンドロサイト、ミエリン蛋白と共に、脱髄部位のミエリン修復が大幅に増加した。

・また、統合失調症様行動をも改善させた(オープンフィールド試験およびY迷路において)

 

⇒再ミエリン化を強化することは、統合失調症のための潜在的な治療法であることを示している。

 

クレマスチンで視神経の脱髄が回復したという、ヒト臨床試験

また、近年では中枢神経の脱髄疾患である多発性硬化症(MS)と統合失調症の共通点も指摘されています(オリゴデンドロサイトの障害(※)・MS患者の一部に見られる統合失調症様症状など)

 

以下の臨床試験ではクレマスチンにより多発性硬化症患者における視神経の脱随を回復させたという報告もあり、統合失調症に関しても、何らかの改善が見られる可能性があることが示唆されています。

 

(※オリゴデンドロサイトとは、軸策を覆うミエリンを形成する細胞であり、跳躍伝導により軸策の伝導速度を促進させています。オリゴデンドロサイトが障害されると神経伝導速度が低下し、脳機能に異常をきたすことが分かっています)

 

■MS患者へのクレマスチン投与により、ミエリン修復が示唆されたという臨床試験

(American Academy of Neurology’s 68th Annual Meeting in Vancouver, Canada, April 15 to 21, 2016. )

 

【対象】

平均罹病期間5年、平均年齢40歳、軽度の症状を有し慢性化した視神経炎を有するMS患者50例

 

【試験内容】

被験者に対し、クレマスチンまたはプラセボが交互に3カ月、2カ月の期間投与された。

 

【結果】

・クレマスチン投与時にはプラセボ投与時に比べ、視覚誘発電位が平均2ミリ秒短縮した(ミエリン修復のバイオマーカー)。

・わずかではあるが視覚野の電位変化に改善が認められた。

・また、同試験において同薬服用中の疲労感が報告された。

 

⇒「同薬投与時に見られた視力障害の改善は大きなものではないが、薬剤でMSによる障害が回復できる可能性が確認された」と述べられている。

 

このように、小規模ではありますが脱髄をいくらか回復させたという報告があります。

 

現段階では治療薬としての大きな効果は期待できないようですが、今後のさらなる研究でエピジェネティックスによる統合失調症の治療が進展する可能性もあるかもしれません。

(photoby:pixabay)

著者: あせちるこりんさん

本記事は、2016-08-03掲載時点の情報となります。
記事内容について実行の際には、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


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