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統合失調症の治療に、アミノ酸の一種「グリシン」が有効となる可能性?グルタミン酸神経系の改善

medications-257389_640.jpg従来、統合失調症(SZ)の発症原因には、遺伝要因と脳内ドーパミン濃度の調整異常が関わっていると考えられていましたが、ドーパミンを調整する治療薬だけでは上手く行かない症例が多く、最近の研究では数多くの因子が関連していると考えられています。

 

中でも特に注目されているのが「グルタミン酸神経系の伝達異常」と「エピジェネティックスの関与」であり、グルタミン酸神経系を調整する物質として、アミノ酸の一種「グリシン」や「D-セリン」が挙げられています。

 

これまでの抗精神病薬と異なる側面から病態を改善できる補助薬として、期待がもたれています。

 

統合失調症では「グルタミン酸受容体」が正常に機能していない?

グルタミン酸受容体(のひとつNMDA受容体)は、学習記憶に関わる人間にとって重要なレセプターです。

しかし、SZにおいては、グルタミン酸が正常に受容体を通過しておらず、細胞膜に溜まり細胞死や受容体の障害を起こしているという報告もあります。

 

■SZにおけるグルタミン酸に関する研究報告

・グルタミン酸受容体のひとつ、NMDA受容体機能が低下しており、それによってドーパミン伝達が亢進しやすくなる

・グルタミン酸放出増加が細胞死を引き起こし、細胞膜のNMDA受容体を減少させる(PMID: 9721099)

 

グリシンの経口投与がグルタミン酸受容体のゲートを開かせる可能性

NMDA受容体が正常に働くメカニズムには、2種のアミノ酸が受容体に結合し、通過孔を塞いでいるMg2+(マグネシウムイオン)を退かせることが必要になります。

 

■NMDA受容体のメカニズム

・NMDA受容体は2種類×各2個づつ=4個から成り立っており(NR1とNR2が2個づつ)、その中心(通過孔)をイオンが透過する。

・NR1にはアミノ酸「グリシン」が結合する部位があり、この結合がなければ中心を塞いでいるMg2+を除いて通過孔を開けない。

 

このように、グリシンが欠乏状態にあるとNMDA状態が正常に作動しませんが、海外研究によればグリシンの経口投与がこの改善に有効であるという報告もあります。

 

■SZにおけるグリシンに関する報告報告

・グルタミン酸神経系を機能させる「グリシン」の血中濃度が低下しており、「D-セリン」の分解酵素DAOが上昇している(J Psychopharmacol. 24:1055-1067, 2010 )

・グリシン血中濃度はPANSSの陰性症状得点、SANSの合計点と負の相関があった。

 

統合失調症へのグリシン投与に関する臨床試験の結果

■グリシン投与により、SZ患者の陰性症状が改善したという臨床試験(PMID: 8932891)

【試験内容】

抗精神病薬を服用している統合失調症患者11名に、グリシン(0.8 g/kg/日)6週間にわたり摂取してもらった。二重盲検、プラセボ対照によって試験を実施した。

 

【結果】

・グリシンは忍容性が良好であった。

・血中グリシン濃度は大幅に増加した。

・陰性症状が平均7%改善し、抑うつ、認知症状も有意に改善した。

 

■サルコシンの投与で、SZ患者のグルタミン酸濃度が顕著に減少したという臨床試験(PMID: 26501260/PMID: 26306650)

【試験内容】

支配的な陰性症状のあるSZ患者50人(抗精神病薬を服用)に対し、サルコシン(メチル化グリシン)またはプラセボを6ヶ月間服用してもらった。

 

【結果】

・サルコシン投与群は、海馬のGlx/Cr(Glx:グルタミン酸+グルタミン酸塩+GABA、CR:クレアチン)が顕著に減少した。

・サルコシン投与群は、臨床症状の改善と同時に、神経細胞の生存率(NAA)と神経細胞の活性(MI)のマーカーを増加させた。

 

⇒サルコシンの毎日2g投与は、統合失調症の補助治療として有効になる可能性がある。

 

■サルコシンの投与で、SZ患者の病態評価スケールが改善したとする臨床試験(PMID: 19887019)

 

【試験内容】

慢性SZ患者60人に対し、2g/日×6週間にわたり2薬のいずれか(D-セリン、N-メチルグリシン(サルコシン))を投与した。二重盲検、プラセボ対照によって試験を実施した。

 

【結果】

・サルコシンは、4つ全ての評価スケール(PANSS/SANS/QO/GAF)でプラセボよりも優れていた

・一方、D-セリンは、プラセボと有意差はなかった。

・サルコシンの忍容性は良好であった。

 

このように、グリシンの効果についてはメチル化されたグリシンであるサルコシンのほうが脳へ移行しやすく効果が高いことが分かっています。

 

ただ、サルコシンの投与は前立腺がんの発症やDNAメチル化と相関があるという報告もあり、グリシンそのものの方が安全性が高く、また入手しやすいようです(通販サイトなどで甘味料として販売されている)。

 

またグリシンに作用する治療薬も現在研究開発されているということから、こちらにも期待がもたれています。

(photoby:pixabay)

著者: あせちるこりんさん

本記事は、2016-08-03掲載時点の情報となります。
記事内容について実行の際には、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


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