気になる病気・症状
便秘かと思ってたら、腹痛や嘔吐がひどい…。もしかして「腸閉塞」?【見分け方・原因・症状・対処法】
便秘と思っていたら、とても痛い、吐き気がひどい…。症状が重い場合は、腸閉塞(イレウス)の可能性があります。見分け方は?子供がかかる可能性は?すぐ取るべき処置は?順に見ていきましょう。
その症状、腸閉塞かもしれません。腸閉塞ってこんな病気
急に激しい腹痛におそわれ、吐き気や嘔吐まで起きてしまう・・・そんなとき、「急性腸閉塞」という病気が疑われます。腸閉塞は、進行すると腸管の壊死などを起こし、生命の危険を伴うことがあるため、早急に治療が必要です。
腸が詰まってしまった状態=「腸閉塞(イレウス)」
体の正常な働きが損なわれて、食べ物や消化液の流れが小腸や大腸で滞ってしまった状態、つまり腸に詰まってしまった状態が腸閉塞(イレウス)です。
腸閉塞の主な症状
(1)嘔吐
腸閉塞の中で最も顕著な症状です。
腸の詰まりのため食べ物を排泄できず、逆流させてしまいます。
吐き気にはじまり、胃液や胆汁を吐く、腸内のものを吐く、と進行します。
(2)腹痛
激痛が続く場合と、強い痛みの後でやや症状が治まるといった強弱がおよそ30秒ごとにくりかえされる場合とがあります。
(3)便秘
腸が詰まるため、便秘気味になります。
腸の配置が生まれつきゆがんでいるために起こる腸閉塞もあります。
幼い頃から便秘気味の人は腸閉塞予備軍かもしれません。
便秘がずっと続いていたら。何日ぐらいから危険?
便秘が重症化して、詰まった便が固くなり、腸が徐々に塞がれると「糞便性腸閉塞」になることがあります。便秘に起因するために、腸閉塞との見分けが特に難しいと言われています。
腸内環境の悪化や水分不足によってうんちが黒く、カチカチになるタイプの便秘は要注意です。
便秘が2週間・・・危険レベル
2週間便秘が続いているだけでも腸閉塞の可能性はあるとされ、すぐに入院するレベルと考えられます。
便秘が1週間・・・要注意レベル
医療機関を受診するなどして、何とか便を出した方がいいでしょう。繰り返し便秘になっている人ほど腸内に宿便が蓄積されており、腸閉塞を引き起こしやすいとされています。
こんな症状なら、普通の便秘?
便秘とは、便が出にくい状態のこと。お腹の張りや、腹痛などの深い症状はありますが、命の危険につながることはほとんどありません。
しかし、便秘に似た症状がおきる「腸閉塞」は違います。便が出ない症状のほかに、吐き気、嘔吐などが一緒に起こります。
ここでは目安として、普通の便秘と考えてよい症状をまとめました。
日数・・・「便秘が3~4日」なら普通の便秘の範囲内
便秘は、腸の働きが弱ったり、腸内細菌のバランスが崩れたりして、便が硬くなって排泄できない状態が続きます。腸そのものには問題がないので、食生活や生活環境を見直せば比較的簡単に解消することができます。
3~4日も出なければお腹が苦しいはずなので、そのままにせず、ぜひ生活の見直しで便秘を解消してください。
腹痛の度合い・・・痛くても「立っていられる程度」なら大丈夫
便秘の場合でも重症化すれば激しい腹痛が伴いますが、多くの場合、日常生活に大きな支障をきたすことはありません。
しかし腸閉塞の腹痛は、痛くて立っていられない、転げまわるほどの痛みがいきなり襲ってきます。
顔面が蒼白になり、立っているのがつらいくらいの腹痛や嘔吐などの症状が起こるとされていて、日常生活を送るのに支障が出ます。
油汗をかくような痛みが出る場合は、別の病気を発症している可能性もあります。早めに診てもらうことが重要です。
吐き気や嘔吐・・・「お腹がちょっと苦しい」くらいなら大丈夫
便秘が3日以上になってくると、お腹が苦しく、気持ち悪くなることがあります。この程度であれば便秘の範囲内としてよいでしょう。しかし、食べ物の逆流や、腸内の腐敗ガス発生による圧迫などで吐き気・嘔吐が起こってくると要注意です。
ひどい吐き気や嘔吐を伴う腸閉塞では、はじめは胃液などを吐きますが、次第に腸から逆流してきた腸の内容物になり、便の色味や臭いを増していきます。便秘でここまでなることはありませんので、完全に腸閉塞と判断できます。
「胸のあたりまで苦しい」「吐き気がある」「ひどい腹痛がある」という症状は要注意しましょう。重症化・危険な状態になる前に早期治療が大切となりますので、すぐに病院へ向いましょう。
とても痛い時、吐き気が止まらない時の対処
便秘が続いているだけだと思っていても、立っていられないほどの激しい腹痛や、なかなかおさまらない吐き気などが起きてくると、腸閉塞を疑いましょう。
自分でできること
吐き気を我慢するよりは、トイレなどにこもってできるだけ吐いたほうが楽になるでしょう。激痛が繰り返すならば、すぐに病院へ向かえるように、家族に頼んだりタクシーを手配するなどして準備しましょう。
医療機関でされる処置
腸閉塞が疑われる場合、まずX線、超音波、CTなどで検査を行い、どういうタイプの腸閉塞であるかを特定します。腸閉塞のタイプが「絞扼性腸閉塞」でなければ、手術以外の保存的治療で治ります。入院し、絶飲食で消化管を休めつつ、点滴による補液で経過をみます。軽度なら、消化管を休めるだけで治癒できます。
子供にも発症する可能性が。予兆や症状は?
腸閉塞の中でも特に「絞扼性イレウス」は、オダギリジョーさんと香椎由宇さんの次男がわずか1歳で亡くなったことをきっかけに、広く世間に知られるようになりました。
腸閉塞の初期症状が疑われる赤ちゃんの症状
赤ちゃんが普通とは違う激しい泣き方をして吐いてしまったら、腸閉塞の初期症状を疑う必要があるでしょう。
腸閉塞の場合、初期症状では胃液や胆汁を吐きます。白または透明の酸っぱい液が胃液、黄色で苦い液が胆汁です。腸閉塞が進行していくと、小腸や大腸の中のもの(=糞便臭)が逆流して吐くことになります。
吐いた直後は、一時的に腹痛や吐き気が軽くなるものの、嘔吐は繰り返されます。また、腹痛も強い痛みと痛みが和らぐ状態とが繰り返される特徴があるため、痛みが一時的に和らいだからといって安心するのは危険です。
激しい泣き方が5~15分間隔で繰り返されることが多いのも特徴です。
赤ちゃんが普通の泣き方とは違う激しい泣き方をして、さらに白っぽくて酸っぱい液や黄色で苦い液を吐いたら、腸閉塞の危険性があります。
腸閉塞の症状としては、お腹が膨れる、嘔吐を繰り返す、腹痛などが主なものになりますが、血便や下血を伴うこともあります。また、ひどい脱水症状を起こすこともあります。
子供が発症した場合の対処
まだ自分の体調不良を言葉で訴えられない赤ちゃんや小さな子供の場合、大人がいつもの様子とどう違うのか、短い時間で見極めることが明暗を左右します。
子供が腸閉塞かもしれない、そんなときの対処法について、大まかに「泣き方を観察する」「吐いた物を観察する」「夜中でも病院へ」の3つに分けてご説明します。
泣き方を観察する
いつものぐずり泣き、甘え泣き、おむつやおっぱい、空腹などの欲求による泣き方と、腸閉塞の強烈な痛みによる泣き方は大きく異なり、いつも面倒を見ているお母さんなら直感で「何かがおかしい」と感じることができるでしょう。判断に自信がなくても、腸閉塞では嘔吐がセットになることも多く、また痛みの波があるため、5~15分ごとに繰り返し激しい痛みで泣く、といったことも判断の目安になります。
吐いた物を観察する
・初期症状… 胃液(白または透明の酸っぱい液)、胆汁(黄色で苦い液)
子供の嘔吐はさまざまな病気で起きるため、この段階ではまだ腸閉塞とは判断がつきかねますが、ポイントは「繰り返し吐く」ということです。
・進行すると… 小腸や大腸の内容物(うんちに近い臭い・色、下痢便のようなもの)
便のような臭いの吐瀉物になってくると、ほぼ間違いなく腸閉塞を起こしていると考えてよいでしょう。
自然に治癒することはまずありませんので、すぐに病院を受診してください。
夜中でも病院へ
~発症から8時間以内の手術で助かる「絞扼性イレウス」~
特に腸のねじれが原因となる「絞扼(こうやく)性腸閉塞(絞扼性イレウス)」は、放置すれば100%が死に至るとされますが、発症からせめて12時間以内、できれば8時間に手術を行えば、助かる可能性が格段に高くなるといわれています。検査の時間もかかるため、激しい泣き方を5~15分おきに繰り返すようなら、夜中でも急いで病院に連れて行きましょう。
腸間膜が圧迫されたり、ねじれたりする絞扼性イレウスは、頻脈、発熱、尿量の減少などもみられ、ショック状態になるため、診断が確定したらすぐに緊急手術となります。
便秘から、腸閉塞へ悪化させないためには?予防法
腸閉塞の1つのタイプである「糞便(ふんべん)性イレウス」は、便秘の末期症状として起こりやすい病気です。便が腸に詰まることで腸閉塞を起こします。便が長く腸内に滞在すればするほど糞便性イレウスになる確率が高まります。
便秘を悪化させて腸閉塞を起こさないよう、以下のような予防法で気を付けましょう。
・排便の習慣をつける
・下剤を乱用しない
・消化の悪いものを大量に摂取しない
・暴飲暴食を避け、少しずつよく噛む
・規則正しい生活をする
普段から心がけたいこと。正しい便秘の解消法
生活習慣による腸の機能低下が原因で起こる便秘、病気が原因となって起こる便秘・・・。便秘の原因はさまざまです。原因に応じた正しい解消法を知っておきましょう。
お腹が張ってるのに便が出ない→ 有酸素運動+不溶性食物繊維
腹筋の弱い老人や妊娠後の女性に多く、肌荒れの原因にもなる「弛緩性便秘(ちかんせいべんぴ)」。お腹が張ってるのに便が出ない、出ても残便感が残るのが特徴です。
運動不足で腸の蠕動(ぜんどう)運動が弱くなるのが原因。女性は無理なダイエットで筋力が落ちるのが原因となることも。
ウォーキングやスロージョギングなどの有酸素運動で、結腸周りの筋肉を鍛えましょう。食事は不溶性の食物繊維(穀類、野菜、豆類など)を意識して摂りましょう。ご飯を玄米に切り変えるだけでも効果があります。
便秘と下痢を繰り返す→ リラックス+水溶性植物繊維
便秘と下痢を繰り返す「痙攣性便秘(けいれんせいべんぴ)」。過敏性腸症候群とも言い、コロコロした兎の糞のような便が出ることもあります。
過度なストレスにより自律神経が乱れ、蠕動運動が活発になってしまって腸が痙攣します。交感神経が優位の時には便秘に、副交感神経が優位になると下痢になるのが特徴です。年齢に関係なく神経質な人に多い便秘です。
とにかくリラックス出来る時間を作り、腸内環境を整えましょう。食物繊維は不溶性を摂ると逆効果。必ず水溶性の食物繊維(昆布、わかめ、こんにゃく、果物、里いもなど)を摂るようにして下さい。変に腸を刺激する下剤や便秘薬は使わないでください。
直腸に便が溜まる→ 便意を我慢しない+マグネシウム、オリーブオイル
便がせっかく直腸までいくのに排便できないのが「直腸性便秘(ちょくちょうせいべんぴ)」。排便センサーが鈍って直腸に便が溜まり、ひどい時にはパンパンに膨れ上がります。便が硬くて太いため、排便する時に痛みがあり、時間もかかります。
最大の原因は、我慢です。忙しい、恥ずかしいなどの理由で便意を無視し続けると、徐々に脳との連携がうまくいかなくなり、排便センサーの感度が鈍ってしまいます。
一番の解消法は、便意を感じたらガマンしないこと。すでに直腸に便が溜まっているため、食物繊維は効果が期待できません。ただし便を柔らかくするマグネシウム(バナナ等)、潤滑油としてのオリーブオイルは助けになるでしょう。
検査を受けてみるのも
医療機関を受診して腸閉塞が疑われる場合、聴診、X線(レントゲン)、超音波、CT検査などを行います。
聴診
聴診器で腹部の音を聞き、閉塞の有無などを調べます。腸閉塞が起きていると、腸の動きの音が弱まる、全く音がしなくなる等から判断できます。聴診で病気が発見された場合は、CT検査などで詳しく検査することがあります。
レントゲン検査
閉塞をきたしている部位を診断します。ガスの溜まり具合、腸管が拡張しているどうかなどを見ます。腸内にガスが貯まっていると、黒い影が映ります。
超音波検査・CT検査
レントゲンだけでは分からない点を詳しく調べます。腸管の拡張の程度、蠕動(ぜんどう)運動の異常、腹水の有無、腸管壁の厚さなどを見ることができます。腸閉塞を生じた原因や、腸閉塞の種類などの診断もできます。
手術による根本的な治療
絞扼性腸閉塞でなければ、ほとんどは保存的治療(手術以外の方法)で治癒します。食事や飲水を中止し、胃腸を休め、十分な補液を行います。症状が進行して腸の張りが強い場合は、鼻から胃や腸まで管を入れ、嘔吐のもととなる胃や腸の内容物を体の外に吸い出します。
手術は避けるのが一般的
腸閉塞の原因のひとつに、手術箇所の癒着が挙げられます。手術的治療は、おなかを切ることで新しい癒着を生み出し、次の腸閉塞の誘因となってしまうため、避けるのが一般的です。
手術が必要な場合
腸の血管が圧迫されたり、ねじれたりする絞扼性腸閉塞や、保存的治療を1週間以上続けても回復しない、何度も腸閉塞を繰り返す、といった場合には手術による治療を選択します。癒着による腸閉塞や、大腸がんなどの腫瘍が原因の腸閉塞でもその原因を取り除くための手術を行います。
体質や遺伝的な、便秘・腸閉塞のなりやすさ
腸の正常な働きが損なわれて、腸が詰まってしまう急性腸閉塞は、生命の危機にもなりうる大変な病気です。では体質や遺伝的観点から見て、どのような人が腸閉塞になりやすいのでしょうか。
慢性的な便秘体質
生まれつき腸の配置がゆがんでいることが原因で起こる腸閉塞もあります。小さい頃から便秘気味だという人は、腸閉塞予備軍かもしれません。便秘が重症化すると、詰まった便が固くなり、腸が徐々に塞がれて「糞便性腸閉塞」になることもあるので、早めの対策が必要です。
癒着しやすい体質
腹膜炎などの炎症が起きたことがある人や、腹部を切る開腹手術を受けた人などは、腸と腹壁、腸同士、内臓同士の癒着(本来は分離しているはずの臓器の膜や皮膚がくっついてしまうこと)が必ず起こります。そして癒着した部分を中心に腸が折れ曲がったり、ねじれたり、癒着部分でほかの腸が圧迫されたりして腸が詰まるパターンで腸閉塞になることが多いのです。
内臓の炎症経験や開腹手術経験があると、腸閉塞になる可能性が高まる、と覚えておきましょう。
腸が自然にねじれてしまう「腸捻転」
腸自体が自然にねじれて詰まってしまう腸捻転(ちょうねんてん)によって腸閉塞になってしまうこともあります。先天性の腸捻転や、腸の癒着が原因とされていますが、一説には「はらわたが煮えくり返る」という表現があるように、過度のストレスによっても腸のねじれが生まれるとも言われています。
なお、腸に酸素や栄養分を送る血管が入った膜(腸間膜)が圧迫されたり、ねじれたりして血流障害を起こしたものが「絞扼性(こうやくせい)腸閉塞」で、これはただちに手術を行わないと死に至ってしまう恐ろしい病気です。
脱腸の一種「大腿ヘルニア」
大腿ヘルニアと呼ばれる脱腸の一種で腸閉塞を引き起こすケースは、高齢の女性に多く見られます。お腹のなかのさまざまなくぼみ(内ヘルニア)に腸がはまり込んでしまうこの病気でも、腸が詰まって腸閉塞になることがあります。
遺伝によるもの
大腸がんが原因で腸閉塞になることもあります。大腸がんは遺伝するものもあり、身内に大腸がんやその他のがん患者がいれば、若いうちからがんの発症に備えて大腸の精密検査をする必要があります。
また、 遺伝の可能性もある「偽性腸閉塞症」についても触れておきましょう。偽性腸閉塞症は、腸閉塞に似た症状を示すけれど腸閉塞とは区別されている病気です。腸閉塞と似た腹痛や吐き気、嘔吐などが症状としてみられますが、腸閉塞のように腸に内容物が詰まって起こるわけではなく、現在はその原因がまだはっきりと解明されていない症状で、遺伝する可能性が報告されています。
・慢性特発性偽性腸閉塞症(指定難病):
海外では遺伝することが報告されています。日本では家族内発症の症例があるものの、実際どの程度遺伝するかはまだ明らかになっていません。
・慢性偽性腸閉塞症:
遺伝性があることから、何らかの遺伝子異常のもとに発症すると考えられています。多くの成人発症の患者は長期にわたる難治性便秘症状があり、腸管に何らかのストレス負荷がかかることで症状が顕在化します。
終わりに
腸閉塞は、激しい腹痛や嘔吐を伴う辛い症状、腸管壊死などによる命の危険などから、緊急性の高い病気です。生まれつき腸に異常があることもあるので、生まれたての赤ちゃんでも発症の可能性があります。
いつもと違う激しい腹痛や、嘔吐がある場合には我慢せず、できるだけ早めに外科手術が可能な医療機関を受診しましょう。
(Photo by: http://www.photo-ac.com/ )
著者: カラダノート編集部