育児
チック症について『正しく』知る必要性
頻繁なまばたき、口をゆがめる、肩をすくめる、うっうっと声を出すなど、子供と話していてふと気づく仕草や癖のようなものがあると思います。
初めは、この子の癖なんだろうと思いそのまま放置してみますが、数年しても直らない。それやめなさい、と指摘するようになると、症状はますます悪化してしまう…。
こういったことで悩まれているのを、園児や小学生の子供がいらっしゃるお母様にお聞きすることがあります。
こういった、本人の意思とは無関係に癖のような症状が出てしまう、またその持続期間が1ヶ月以上長引くものを『チック症』と呼びます。おおよそ5歳~10歳の子供の約10%が持っている症状であると言われていますので、決して珍しい病気ではありません。
このチック症が1年以上継続して見られると、『慢性チック症』と呼ばれ、加えて多彩な運動性チックや音声チックが合わさると『トゥレット症候群』という呼ばれるようになります。
チック症からトゥレット症候群への移行確率は、0.05%と低確率ですので、多くのお子さんは一過性チックまたは慢性チックの可能性が高いと思われます。
チック症の種類には、どのようなものがあるか?
基本的には3つのタイプに分けられます。『1.運動性チック症、2.音声チック症、3.その他のチック症』です。
1. 運動性チック症
瞬き、顔をしかめる、首振り、肩をすくめる、ジャンプする、体をびくつかせる、物を蹴るなど。
2. 音声チック症
咳払い、鼻を鳴らす、汚言を発する(「バカ!」「死ね!」などの攻撃的な言葉)、人の言葉を繰り返すなど。
3. その他のチック症
髪の毛を抜く、手の皮膚を噛む、匂いを嗅ぐなど。
では、これらの症状が起こる原因とはどのようなものでしょうか?
チック症発症の原因
チック症の発症は、過去には家庭環境に問題がある為と考えられていました。母親のしつけが厳しすぎる、愛情を持って育てていない、などといった事です。しかし、現在では脳神経の伝達物質である『ドーパミン』の過剰分泌が原因であるという考え方が一般的となっています。
また、発症の原因とは別に、症状を悪化させてしまう要因が、ストレス環境下にいること、過緊張な状態にいることなども分かってきています。
チック症の治療とは?
チック症が原因で、学校の友達に症状を指摘され、不登校になってしまうというお子様をお持ちのお母様のお話がありました。チック症は、ご家庭内での理解と、焦らず静観することによる療法が基本的ですが、学校生活を送る上で、支障が出ている場合は、投薬によって治療を行うことも選択肢のひとつになります。
治療薬は、西洋薬と漢方薬に分けられます。
チック症に、西洋薬で最も良く用いられるのは『ドーパミン受容体阻害薬』ですが、これは脳を興奮状態へと持っていくドーパミンの過剰分泌を抑える作用があります。
但し、副作用として『手の震え、筋肉のこわばり、不眠、光線過敏症』などが出てくる可能性があります。
また、ドーパミンの暴走を抑制し、交感神経を調節する神経伝達物質の『セロトニン』や『GABA』などを活性化させる『抗不安薬』などを用いることもあります。この副作用としては、『眠気、便秘、消化不良、食用減退、ふらつき』などがあります。
漢方薬を用いた治療もあります。『柴胡(さいこ)』や『半夏(はんげ)』などといった生薬は、抗不安効果があると言われていますが、用いる個人の体質や体調によっては、効果が強すぎる側面があります。
漢方治療は、個人の体に合わせてオーダーメイドに処方を行いますので、最初の内は体力を回復させるような効果の優しいものから処方していきます。選び方によっては、逆に体調を悪化させてしまうようなケースもありますので、必ず専門家に相談、診察を受けてから服用するようにしましょう。
最近になってようやく、チック症が神経系による原因のものである、ということが分かってきましたが、それでもまだ世間には誤った認識があり、育て方についてお母さんが周囲から責められたり、またそのことで悩んで、親子間の新たなストレスとなり症状を悪化させてしまうといったケースもあります。
チック症の早期治療には、まず発生の原因を正しく知ることで、ご家庭内の環境を整えること、お母さん自信が安心をすること、そして焦らず静観をすることが大切です。
チック症のお子さんをお持ちで悩んでおられる方は沢山いらっしゃいます。もし自分の子供だけ…と不安なときは、コミュニティーや専門機関に相談することも視野に入れて下さい。
(Photo by:http://www.photo-ac.com/)
著者: カラダノート編集部