気になる病気・症状
脾機能亢進症の原因になる肝硬変と敗血症とは?
肝硬変が脾臓に与えるダメージ
「脾機能亢進症(ひきのうこうしんしょう」という病気をご存知でしょうか。『脾臓』の機能が『亢進』する、すなわち正常な状態を超えて機能が高まってしまう病気です。
実は様々な病気の合併症として取りざたされる病気なのですが、肝硬変に伴って起こることが最も多いとされています。
◆ 肝硬変
ウイルス性肝炎や、アルコール性肝炎などの慢性の肝疾患が原因となり、肝細胞が死滅・減少することで、線維組織に置き変わっていきます。この結果、肝臓が固くなってしまったのが肝硬変です。
食欲不振や体重減少、黄疸、腹水がたまったり、意識障害が生じることもあります。また、肝硬変は、元の正常な肝臓に戻ることはありません。
◆ 肝硬変から門脈圧亢進症へ
肝臓にかかわる血管に「門脈」という血管があります。消化管やすい臓、脾臓からの血液を受け、消化管で吸収された栄養分を肝臓へ運ぶ役割を持つ血管です。
肝硬変を起こすと、門脈の血行が悪くなり、結果、血圧が上昇、門脈圧亢進症となります。食道や胃静脈瘤、脾腫、腹水などの症状が出て、さらに食道や胃静脈瘤などが破たん、吐血したりします。
◆ 門脈圧亢進症が進むと
肝硬変などの門脈圧亢進症の原因となる疾患を治療せず放っておくと、門脈にかかわる脾臓にも、症状が出ます。脾機能亢進症を併発し、脾臓の役割である、血球破壊が増進、貧血症状が起こります。
具体的にあげると、
・白血球が減少することで、感染しやすくなる
・血小板が減少し、出血が止まりにくくなる
・赤血球が減少し、鉄欠乏性貧血となる
などです。
◆ 治療には…
脾機能亢進症にまで至った場合は、薬剤治療や、鉄剤の飲用、脾臓の摘出が多く適用されます。
また、胃静脈瘤が出来ている場合は、破裂・出血すると命にかかわることもあるため、これも摘出するか結紮するなどして、静脈瘤の消失を目指すことになります。
脾機能亢進症は、何らかの原因の疾病があった上で、起こる病気です。医師にかかって指摘された場合は、原因の病気の完治を目指し、治療にむかいましょう。
脾臓の肥大:脾腫と、脾機能亢進症
脾臓(ひぞう)という臓器、ご存知でしょうか。
重さは100g程度で、横隔膜より上部、胃の裏側にある臓器です。
消化器系、循環器系、内分泌系などの臓器分類には入らず、「神秘の臓器(silent organ)」とも呼ばれていた臓器です。
脾臓とは
脾臓の役割は、大きく分けて4つあります。
・免疫機能(B細胞やT細胞を成熟させる)
・造血機能(胎児期に、赤血球を作る)
・血液の貯蔵
・老化した血球の破壊
非常に重要そうな機能が並びますが、脾臓を摘出しても、人は生きていられます。
ですので、脾臓が他にダメージを与えるような場合は、摘出手術が行われます。
脾腫
感染症や血液疾患、肝臓の疾患などが起こると、脾臓に流入する血液量が増加したり、異常な血球を処理することなどで、脾臓の大きな膨れ(脾腫)が起こります。
元は100gぐらいですが、倍以上、果てはおへそぐらいまでや、肝臓と同じぐらいまで大きくなることも。
そうなると、周囲の臓器を圧迫し、影響を及ぼします。
また、肝障害においては、肝臓で処理できないたんぱく質や抗原を脾臓でより多く処理するため、脾臓の機能が活発化、すなわち脾機能亢進症となります。
脾機能亢進症(ひきのうこうしんしょう)
脾臓の機能が活発になると、必要な分まで血球を処理してしまいます。
つまり、
・赤血球を処理しすぎることによる、貧血
・血小板を処理しすぎることによる止血機能の障害
などが起こるようになるのです。
脾機能亢進症は、若い女性に多く見られるというデータもあります。
貧血が長く続く…という場合は、脾臓の機能が関連している場合もあります。
サプリだけに頼るのではなく、医師にも相談してみましょう。
脾機能亢進症の手術~腹腔鏡下脾臓摘出術の流れ、術後の様子はどんな感じなの?
脾機能亢進症では亢進した脾臓の機能を元に戻すために脾臓摘出という手術を行います。
ここでは腹腔鏡下脾臓摘出術の流れや術後の様子などを紹介します。
●腹腔鏡下脾臓摘出術とは
腹腔鏡というのはカメラのようなもののことで、このカメラを体にいれた状態で行われるのが腹腔鏡下手術です。
脾臓摘出のためには従来は20cmもの開腹(メスでお腹を切る)が必要でしたが、腹腔鏡があることで傷は1つあたり5-10mm、お腹の数か所に傷が出来ることになりました。
手術時間は3-4時間程度ですが、麻酔を効かせたり術後の手当などを含めると5-6時間になることも予測されます。
●翌日から食事も可能
腹腔鏡下脾臓摘出術の術後は回復が早く、人によっては翌日から食事が出来るようになります。
手術のその日は体に管がついていますが、多くの人は翌日に管を外して食事をし、手術翌日から歩行も可能です。
手術日を含めて1週間目までは入院が必要ですが、1週間経って検査結果に異常がなければ退院できます。
職場復帰までは1か月から1か月半を見ておくとよいでしょう。
●脾臓はとっても問題ない
脾臓は人間の臓器の中でも『なぜ退化せずに残っているのかよくわからない』とも言われる臓器です。
造血機能や免疫機能など、もちろん脾臓にも人間の体のための機能はあります。ですが、それは脾臓がなくてもほとんどの場合が正常に保たれるのです。
そのため、脾臓を切除したとしても大きな問題が引き起こされるケースはあまり考えられません。
脾臓摘出術は安全性の確立された手術ですが、合併症もゼロではないので注意しましょう。
中には命に係わる合併症もあるので、発熱や意識が遠くなるなどの症状が出たらすぐに治療が必要です。
病院では合併症予防のための処置ももちろん行っています。
多い合併症には肩の痛みがありますが、これは術後4-5日で自然と治ります。
ご存知ですか?「脾機能亢進症」
「脾機能亢進症(ひきのうこうしんしょう)」という病気をご存知でしょうか。
『脾臓』の機能が『亢進』する、すなわち正常な状態を超えて機能が高まってしまう病気です。
実は様々な病気の合併症として、取りざたされる病気です。
ですが、心臓や肝臓に比べて、あまり表立ってこない「脾臓」とはどのような臓器なのでしょうか。
◆ 脾臓の役割
脾臓は、お腹の左上あたり、胃の裏側に当たる部分に存在する、縦12.5cm、横7.5cm、幅5cm程度、重さは120g前後の臓器です。
役割は大きく4つあります。
・免疫機能
免疫応答を行うB細胞やT細胞を成熟させる。
・造血機能
胎児期に、赤血球を作る。生後は骨髄で行われる機能だが、大量出血したり、骨髄での造血が働かない場合には、脾臓で行われることも。
・血液の貯蔵
人間の脾臓は100-200g程度とそれほど大きくないため、そこまで大きな機能ではないが、筋肉が急激に酸素を必要とする状況で、血液を送り出す。ちなみに、マラソンをして横腹が痛くなるのは、この働きが原因です。
・血球の破壊
古くなった赤血球を破壊し、中の鉄を回収する
◆ 脾臓が肥大する病気「脾腫」
脾臓が何らかの原因で大きくなってしまうこと、これを「脾腫」といいますが、原因は様々です。
例をあげると、肝硬変や白血病、リンパ腫、マラリアなどの感染症、赤血球形態異常など、数限りがありません。
この脾腫が起こると、脾臓の機能が亢進した状態となり、「脾機能亢進症」となります。
◆ 脾機能亢進症
脾臓の機能が亢進する(機能が高まる)と、脾臓の機能の一つである血球破壊が過剰になり、貧血や出血した際に止血機能が働かなくなる、出血傾向などが起きるようになります。
◆ 治療法
治療は、脾腫の原因となっている元の病気に対して行うことが基本です。(肝硬変であれば、肝硬変に対する治療を行う)。
ただし、血球破壊の状態まで進むと、脾臓の摘出手術や、放射線による脾臓切除を行うことになります。
以前は、脾臓を摘出しても大きな影響はないと言われていましたが、脾臓は免疫応答の役割を担う臓器のひとつであるため、肺炎双球菌などの感染症にかかり易くなります。ですから、様々な感染症の予防接種を受けるなどして、予防しなければなりません。
いくら影響が少ないとはいっても、臓器切除は体にも負担。
肝硬変など、アルコールの摂取などを控えることで、予防できる病気もあります。
防げるものは防ぎ、健康な体でいたいものですね。
症状を見逃さないで!脾機能亢進症を早期発見するためには?
脾機能亢進症は、脾臓が腫れることで、正常な血球を脾臓が破壊してしまい、血中の赤血球や白血球、血小板が減少し、貧血などの症状を引き起こすものです。
様々な病気が脾機能亢進症を引き起こす
脾機能亢進症は様々な病気が原因で起こります。
早期発見するためにはこれらの原因となる病気の患者は特に意識しておかなければならないということです。
感染症→敗血症・マラリアなど
血液の病気→白血病・骨髄線維症など
特に多い→肝硬変
症状を見逃さず早期発見
脾機能亢進症は様々な病気が原因で起こりうるものなので、元々の病気の症状の他に、貧血や疲労感、出血しやすいなどの脾機能亢進症の症状が見られた場合、それらを見逃さないことです。
脾機能亢進症は血液中の白血球や血小板が減少するため、少しの運動で疲れやすくなったり、倦怠感や脱力感、動機やめまいなどを感じやすくなります。
また、顔色が悪くなったり貧血などの症状が見られ、出血しやすくなるなどの症状も見られるようになります。
そのほか、脾臓が肥大しているため、腹部の膨満感や食欲不振なども症状として現れるので、それらを見逃さないように心がけましょう。
定期的な検診で早期発見
脾機能亢進症であることは、触診により脾臓が腫れているかどうかを確認することでもわかります。
また、骨髄に針を刺し血液を採取する骨髄穿刺でも、検査することができます。
骨髄穿刺は定期的に行うことはありませんが、触診やMRI、CT、超音波検査などにより脾臓の腫れを発見することができますので、これらの検査を定期的に行うことで、脾機能亢進症を早期発見できるようにしましょう。
特にマラリアや敗血症、白血病や骨髄線維症、肝硬変の患者はこれらの検診を定期的に行うことで、脾機能亢進症を早期発見できるようにしましょう。
脾機能亢進症の原因になる肝硬変・敗血症…何故この2つの病気が原因になるの?
脾機能亢進症は血液内の成分に主に異常がみられる病気で、脾臓の摘出によって症状は治まります。
脾機能亢進症は結果的に脾臓の機能が亢進しているだけで、もともとは別に病気があると考えられます。
脾機能亢進症の原因となる病気のうち、代表的な2つの病気を見ていきます。
●脾機能亢進症の原因その1 肝硬変
肝臓はサイレントキラーと言われることもあるくらい、静かに症状が進行する臓器です。
ほとんどの方の場合は肝臓に異常があったとしてもその初期には気づくことがありません。
肝硬変はそんな肝臓の病気で、肝細胞が壊れたところに線維が増えて肝臓全体が硬くなるのが特徴です。
肝臓周辺の血流が悪くなり、肝臓近くにある門脈圧が亢進することで門脈圧亢進症、ひいては脾機能亢進症を引き起こします。
●脾機能亢進症の原因その2 敗血症
脾機能亢進症の原因となる病気のひとつが敗血症です。これは全身性炎症反応を特徴とする病気です。
感染症や外傷、火傷などによって敗血症は起き、悪寒や発熱、認識力低下、最終的には死亡することもあり得る病気でもあります。
敗血症では急性の循環不全が起きるので、脳浮腫や浮腫の可能性が高く、循環不全によって脾機能亢進症が引き起こされる可能性が否定できません。
脾機能亢進症の原因となる病気には敗血症や肝硬変の他にサルコイドーシス、慢性骨髄性白血病、門脈血栓症などもあります。
肝臓に関する病気、血液に関する病気が脾機能亢進症の原因となることが多いです。
脾機能亢進症を調べるためには血液検査の他に骨髄穿刺が必要で、骨髄穿刺は骨髄に針をさす検査なのである程度痛みが避けられません。
また、触診も脾機能亢進症を見つける上では重要なポイントのひとつとなっています。
[Photo by http://pulsedesign.jp/]
著者: カラダノート編集部