気になる病気・症状
血液の病気?グロブリン血症とは?その種類、分類や治療法とは
高ガンマグロブリン血症(高γグロブリン血症)というものをご存知でしょうか。「症」とありますが、正確には病気ではなく病態です。
多発性骨髄腫や肝炎、結核、膠原病などの病気に伴い、血液中に存在するγグロブリンの量が増えてしまう状態をいいます。
○ そもそも、ガンマグロブリンって?
血漿に含まれるタンパク質を大別すると、2種類に分かれます。それが、アルブミンとグロブリン。このグロブリンをさらに電気泳動で分けて、アルファ1、アルファ2、ベータ、ガンマの4つにカテゴライズされています。
このガンマグロブリンの一部が免疫グロブリンとも呼ばれており、病気に対抗する免疫システムの中で、極めて重要な役割を果たす「抗体」でもあります。
抗体はB細胞というリンパ球の一種によって産生され、体の中に侵入してきた細菌やウイルス、微生物を異物として認識し、くっつきます。これは、白血球やマクロファージといった細胞に、「食べてもいいよ」というラベル。白血球などはラベルの貼られた異物をとりこんで破壊(貪食)したり、T細胞などのリンパ球がなどが攻撃し、破壊するのです。
○ ガンマグロブリンが増える理由
このガンマグロブリンが増えてしまう理由は、数多くあります。
免疫が働くと増えるタンパク質ですので、感染症にかかっているときはもちろん、自分の身体を攻撃してしまう自己免疫疾患(膠原病、リウマチなど)、悪性腫瘍、肝疾患でも起こりえます。
また、多発性骨髄腫、マクログロブリン血症といった病期でも、高ガンマグロブリン血症となりえます。
○ どうすれば分かるか?
高ガンマグロブリン血症かどうかは、血液検査で概ね分かります。
検査項目にある、A/G比、という項目をご覧になったことがあるかたもいらっしゃるのでは。「エージー比」と読み、アルブミンとグロブリンの比率を示しています。(基準値は1.1~2.0)
高ガンマグロブリン血症の際には、この数値は低くなります。もちろん、アルブミンが低くなっていても低く出る値ですし、数値が低いからとすぐに病名が出るものでもありません。
合わせて他の検査を行い、なぜガンマグロブリンの値が高くなっているのか、調べる必要があります。
様々な病気の結果として起こる、ガンマグロブリン値の上昇。簡単な血液検査で分かる値ですから、気に留めておいてくださいね。
免疫力が非常に低くなる病気のため、自分の体を守れない!?無又は低γグロブリン血症とは
人間の体には生まれついて持った免疫があります。乳児のころは免疫が高くはありませんが、それでも小学生ともなれば風邪は寝ているだけで治ることも多いでしょう。
これはある程度免疫がついてきて、時間はかかっても自分の免疫力で風邪のウイルスを追い出せるからです。
一方で、免疫力が非常に低い病気として知られているのが無又は低γグロブリン血症です。無γグロブリン血症、低γグロブリン血症という2つの病気を合わせた呼称です。
●何度も繰り返すウイルス感染と重症化
無又は低γグロブリン血症の代表的な症状はウイルス感染による肺炎、中耳炎、髄膜炎などです。
γグロブリンはもともと体の中で免疫細胞として活動しているので、このγグロブリンが極端に少なかったりなかったりするとウイルスに感染しやすい体になります。
乳幼児にみられることの多い髄膜炎も、無又は低γグロブリン血症の患者には大人であっても頻発します。
●先天性も後天性もあるんです
無又は低γグロブリン血症の原因のひとつめは先天性、つまり生まれつきγグロブリンがなかったり少なかったりするタイプです。
これは劣性遺伝で引き継がれることがわかっており、家族歴がある場合は出産前から十分な注意が必要です。
一方で、後天性の中でもメジャーなのは放射線照射や免疫抑制剤投与など薬剤による無又は低γグロブリン血症です。
こちらはガンの治療などでやむなく放射線照射を使い、その結果としてγグロブリンの数が少なくなって免疫力が弱るタイプです。
無又は低γグロブリン血症ではγグロブリンが不足することでウイルス感染しやすいなどの問題を引き起こします。
基本的にはγグロブリンを足す治療法を採用していますので、正しい治療を受けて日常生活における生命のリスクを減らしましょう。
マクログロブリン血症とは?
血液中に存在するリンパ球のうち、免疫グロブリン(ガンマグロブリン)のIgMを産生する形質細胞が異常に増殖する疾患を、マクログロブリン血症といいます。
なお、他の免疫グロブリン(IgG、IgA、IgD、IgE)が増殖する疾患を多発性骨髄腫といいます。
○ 異常な形質細胞の増殖
本来の形質細胞の働きは、外からきたウイルスや微生物などの異物に対抗する免疫グロブリン、すなわち抗体をつくることです。
産生された抗体は、異物を認識しくっつきます。これは、白血球やマクロファージといった細胞に、「食べてもいいよ」と知らせるラベルのようなものです。白血球などはラベルの貼られた異物をとりこんで破壊(貪食)したり、T細胞などのリンパ球がなどが攻撃し、破壊するのです。
ところが、何らかの原因で異常な形質細胞(骨髄腫細胞)が増え、さらにはこの骨髄腫細胞がが産生する異常なガンマグロブリン(M蛋白)が血液中に増え、全身症状が起こります。
○ マクログロブリン血症の症状
血液のがんであるため、全身様々な臓器や場所に、症状を起こします。
代表的な症状は、下記の通りです。
◆ リンパ節の腫れ
◆ 肝臓・脾臓の腫れ
◆ 腎障害・腎不全
M蛋白の血中濃度が高くなると、血液の流動性が悪くなり、上手く流れなくなります(いわゆる血液ドロドロ状態)。その結果、腎臓の一部が詰まってしまうなどの結果、腎障害・腎不全が起こります。
また、骨髄腫細胞が増殖するため、正常な赤血球の産生が抑制され、貧血がおこります。
他にも、全身倦怠、動悸・息切れ、めまいなどの貧血症状、資料障害、精神症状などが起こります。
同じく形質細胞の異常増殖が原因となる骨髄腫に比べて、症状が現れなかったり、治療を何年も必要としなかったりと進行は緩慢です。しかし、症状が出ると、全身に影響を及ぼし、最終的には死に至る病でもあります。
血液検査で高γグロブリン血症とされたり、腰痛が続いたりして受診される方が多いそう。
新薬も認可されてきている現在、一刻も早い発見が望まれますので、いつもと違って気になる点があれば、医師に相談することをおすすめします。
意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)
25歳で1%、70歳では5%超とも言われる「意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症」の罹患者。
いったい何の病気!?と思われたと思われた方がほとんどだと思います。
◆ 意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症
【monoclonal gammopathy of undetermined significance】の直訳で、頭文字をとって【MGUS】とよく称されています。
以前は、【良性単クローン性高ガンマグロブリン血症】とも呼ばれていました。
免疫にかかわるM蛋白(モノクローナル抗体)が、血液中に確認される病気です。
病気、といっても、特に症状がない事がほとんどです。まれに、M蛋白が神経に結合し、しびれ、チクチクとした痛み、脱力感などを生じることもあります。
このM蛋白の量は、何年・何十年と安定していることが多く、治療は必要ありません。
ただし、4分の1程度の人が、多発性骨髄腫、マクログロブリン血症、B細胞リンパ腫などのがんに移行するとされています。
◆ M蛋白が多くなると……
M蛋白の安定が崩れて多くなると、血液に粘りが生じ、渦粘稠度(かねんちゅうど)症候群と呼ばれる、様々な症状が起こります。
例をあげると、腎臓の機能が落ちる、脳血管循環障害(めまい、頭痛、運動失調、意識障害)などです。
また、M蛋白が多くなっている原因は、形質細胞のがん化です。
骨髄の中で免疫にかかわる形質細胞ががん化すると、骨がもろくなる、感染症や貧血なども起こってくるのです。
これらが、多発性骨髄腫、マクログロブリン血症などの病気です。
◆ MGUSからの移行を防ぐには……
残念ながら、現在の医療ではMGUSから多発性骨髄腫等へのがんへの移行を止めることはできていません。
しかし、以降早期に発見できれば、より予後がよくなると考えられます。
◆ MGUSが見つかるのは
MGUSはM蛋白血症がありますが、腫瘍性疾患などの病変がない状態です。
そのため、検診の血液検査などで偶然、グロブリン量が高いことから指摘され、診断される例があります。
MGUSそのものは治療はしないことが勧められますが、6~12か月毎に医師にかかり、検査を受けましょう。
ガンと同じ病気!?原発性マクログロブリン血症…その治療法とは?
人間の血液の中には様々な物質が存在し、それらの物質の量を測ることで病気を予測できたりもします。
例えば、血液中のたんぱく質や脂質を測る等は一般的な血液検査でもよく行われています。
そんな血液中のたんぱく質のうち免疫グロブリンと関係しているのが原発性グロブリン血症です。
●原発性グロブリン血症の問題点
原発性グロブリン血症が抱える問題点は免疫グロブリンを作る細胞がガン細胞になって増えるということです。
原発性免疫グロブリン血症というとわかりにくいですが、簡単に言えばこの病気はガンと同じです。
ですので、治療法においてもガンの治療法とよく似ています。
●治療法1 幹細胞移植で治療する
原発性グロブリン血症の治療法のひとつが移植で、移植は誰でも行えるわけではなく条件を満たしていなければいけません。
条件についてはもともとの体質や病気の進行具合など詳しくはひとりひとり異なりますが、ポイントはステージⅡ以上、65歳以下の場合に移植が適用されやすいことです。
ステージⅡかステージⅢで65歳以下であれば移植を希望すれば自己末梢血幹細胞移植などが受けられることが多いです。
●治療法2 MP療法
MP療法のMとはメルファランという薬、Pはプレドニンという薬です。MP療法ではメルファランとプレドニンを併用して原発性グロブリン血症を治療します。
医学的に見た有効率は50%と高めで、長きにわたる入院が必要ないことから精神的・身体的な負担も少ないです。
血液中で免疫グロブリンを作る細胞がガン化するのが原発性グロブリン血症の問題点で、細胞がガン化するのを防ぐために移植が行われるケースもあります。
65歳より上の年齢の場合は移植のリスクも考えてMP療法が採用されることの方が多いです。
[Photo by:http://www.ac-illust.com/]
著者: カラダノート編集部