アレルギー
牛乳・乳アレルギーの治療法!減感作療法 ~応急処置や自己注射などの対処法まで~
除去食が基本の牛乳・乳アレルギーにおいて、少しずつ摂取しながらアレルギー反応を押さえていこうという「減感作療法」が注目されています。
医師の観察のもとで少量ずつ摂取
減感作療法のやり方にはいくつかあります。
一般的なのが、牛乳を少しずつ継続的に摂取していくという方法です。牛乳をほんの数ml摂取したり、水で薄めたものを摂取するところから始めます。
強い症状が予想される場合には、あらかじめ抗アレルギー薬を服用します。様子を見て症状が弱いなら、少しずつ摂取量を増やしていきます。
乳タンパク質の含有が少ない治療用ミルクを用いる
牛乳・乳アレルギーのアレルゲン(原因物質)、カゼイン・βラクトグロブリンの含有量を調節したミルクを利用します。
ミルクによってカゼインのみわずかに含むもの、βラクトグロブリンのみ含むものなど、さまざまなものがあります。
ミルクの種類・濃度・量を調節しながら摂取します。
いずれの場合も慎重に
食物アレルギーで、あえてアレルゲンを摂取するのは危険を伴います。
抗アレルギー薬・エピペンなどでアナフィラキシーショックに備えたうえで、専門医のもとで行いましょう。
乳幼児の牛乳・乳アレルギーのうち、9割前後は3歳を境に軽減していきます。
あえて症状を出すという負担を考えれば、それ以前の年齢なら、治療を急がないという選択肢もあります。
食物アレルギー自体の治療ではなく、アトピー性皮膚炎の治療では、牛乳の除去が効果的だとも言われます。
被治療者の年齢と症状を踏まえ、医師と相談するのがベストです。
牛乳・乳アレルギーは、待つのも治療のうち!
乳幼児の食物アレルギーで、鶏卵の次に多いのが牛乳・乳アレルギーです。
先進国の乳幼児では2~3%に症状が出るそうです。
牛乳・乳アレルギーの治療には、薬や減感療法など積極的なものと、「待つ」という対処法もあります。
自然治癒しやすいアレルギー
牛乳・乳アレルギーは、成長とともに自然と治まりやすい特徴があります。
牛乳・乳アレルギーの症状が出る乳幼児の85~95%は、3歳以降に治癒するといわれます。
成人で牛乳・乳アレルギーを持つ人は、0.1~0.5%に留まります。
消化管の発達とともに軽減
牛乳・乳アレルギーの多くは、腸など消化管や、免疫機構が未発達なために起こります。
食物のタンパク質は、重要な栄養素である一方、人体にとっては異物です。
0~2歳くらいの子どもでは腸管が未発達なので、牛乳などのタンパク質が分解されないまま体内に取り込まれてしまいます。
このたんぱく質を異物と認識した体がアレルギー症状を起こします。
したがって、年齢とともに消化管や免疫が発達すれば、自然と治る場合が多いのです。
0~3歳の子どもが牛乳・乳アレルギーなら、除去食でアナフィラキシーショックを避けながら様子を見るというのも一案です。
ある程度の年齢になったら、アレルギーの有無を病院で再検査してもらいましょう。
また、小学校に上がるころになってもアレルギー症状が続くなら、積極的な治療法を検討した方が良いかもしれません。
いずれにしろ、専門の医師の判断が必要です。大きくなったから大丈夫ではないかと、自己判断で牛乳を与えるのは危険です。
覚えておこう!牛乳・乳アレルギーが起こった場合の応急処置
牛乳・乳アレルギーで強いアレルギー症状が出た場合、どのような応急処置がとられるのでしょうか。
エピペンには体重制限がある
アナフィラキシーショックを和らげるのに最も効果的なエピペン(自己注射)には、2種類の体重制限があり、体重15kgと30kgで投与量が変わります。
ここで問題になるのは、体重15kg以下の場合です。
0~2歳で発症することが多い牛乳・乳アレルギーは、体重15kg以下の子どもも多いと考えられます。
医師によっては、体重13kg前後から親にエピペンを渡すこともあるそうです。
アナフィラキシーショックが疑われる子どもが搬送された場合、10kg以下でもエピペンを使用するというケースもあります。
このあたりの境目は、症状の重さと医師の判断によるものだと思われます。
病院での応急処置
呼吸器や循環器の働きを回復させることが最優先です。呼吸を確保し、ステロイド剤などの点滴をします。
まずは病院へ
牛乳・乳アレルギーの大半を占める乳幼児は、アナフィラキシーショックを起こした場合、症状の進行が早く重大な事態に至りやすい危険があります。
副作用などの心配から、エピペンや薬の使用も難しい場合も考えられます。
日頃から医師に相談してアレルギーの程度を見極め、家でもできる応急処置の方法を確認してください。
エピペンや常備薬を処方されたら、使用法についても詳しく尋ねましょう。
そして症状が出てしまったら、可能な範囲で応急処置を施し、急いで病院へ行くことが大切です。
万が一の事態に備えるとともに、うっかり乳製品を口にしないよう、食品を子どもの手が届く場所におかないような心がけもポイントです。
食物アレルギーへの対処法~様々な薬物療法~
食物アレルギーを持つ子供を持つ親は、とかく子供が外で何を口にしているか心配なものです。
しかし、親が子供を一日中監視しているわけにもいかないのもまた事実で、子供が集まる場所に努める人は、アレルギーを持つ子供がどのような治療を受けているのかを知っておかなければいけません。
食物アレルギーの予防治療としては、原因食物の除去が基本です。
正しい診断に基づいた原因食物の除去を心がける必要があります。薬物治療はそのうえでのあくまでも補助治療となります。
診断が確定し、原因食物の除去が可能であれば、薬物療法は中止することも可能となります。
自宅や園・学校で使用する薬物とは
1. 抗ヒスタミン
皮膚のかゆみ、発赤、じんましんに有効です。
しかし、アナフィラキシーショックには十分な効果は期待できません。抗ヒスタミン薬には多くの種類があります。
眠気などの鎮静作用や苦味の有無、剤型(錠剤・ドライシロップ・シロップなど)などの飲みやすさを考慮し、主治医と相談して選びます。
ただし、薬物ごとに使用できる年齢が決まっています。
ザジテン(カプセル、ドライシロップ、シロップ)、セルテクト(錠剤、ドライシロップ)、ニポラジン/ゼスラン(錠剤、細粒、シロップ)などが使われてきましたが、最近では鎮静作用の少ない高ヒスタミン薬が普及しています。
2. 気管支拡張剤
気管支が狭くなるために生じる喘鳴、咳き込みなど呼吸器の症状に有効です。しかし、喉頭浮腫による咳や呼吸困難には無効です。
吸入は内服よりも即効性があり、有効です。また、2~3回の反復吸入が可能です。
3. ステロイド薬
即効性はありませんが、急性症状に用いる治療薬の効果を増強したり、数時間後に症状が再発する遅延性アレルギーを予防する効果があります。
4. アドレナリン自己注射器(エピペン)
エピペンは病院外でアドレナリンを自己注射するための薬剤です。2011年9月より保険適用となっています。
病院ではボスミンなどの注射薬を使用しますが、取扱いに厳重な注意が必要なため、病院外では使用できないので、アナフィラキシーの重症化を防ぐためにはエピペンを用います。
これらの薬剤を詳しく知り、食物アレルギーの症状が出た場合は適切な対症療法を行う必ことが大切です。
アナフィラキシーから命を守るためのアドレナリン自己注射
食物アレルギーの症状の進行は速く、速やかに治療を開始することが大切です。アドレナリン注射薬はアナフィラキシーの重症化を予防し、症状を改善するために不可欠です。
アレルギー症状が出現した時の対処法を確認しておくとともに、緊急時の医薬品を準備しておく必要があります。
アドレナリン自己注射薬(エピペン)
エピペンは病院外でアドレナリンを自己注射するための薬剤です。
2011年9月より保険適用となっています。エピペンは体重が15㎏~30㎏用のエピペン注射薬0.15㎎と、体重が30㎏以上用のエピペン注射薬0.3㎎があります。
薬の効果
エピペンはアナフィラキシーのすべての症状を和らげます。効果は5分以内に認められ、約20分間有効です。
●心臓の動きを強くして血圧を上げる。
●血管を収縮してじんましんや浮腫を軽減する。
●のどや気管支を広げて呼吸困難を軽減する。
●胃腸の働きを調整して腹痛や嘔吐を改善する。
対象者
●アナフィラキシーを経験した人。
●アナフィラキシーを起こす危険性が高いと診断された人。
●心臓疾患(不整脈や高血圧)や甲状腺の病気などを持たない人。
●緊急時に本人あるいは家族が注射する意志のある人。
使用するタイミング
●アナフィラキシー出現時(とりわけ呼吸困難や意識障害時)。
●過去に重篤なアナフィラキシー歴があり、その原因食物を誤食し違和感を感じた場合。
園・学校での取り扱い
園・学校での保管場所は保護者とよく相談して決定し、職員全員に周知します。(例としてランドセルに入れておく、登校時に保健室の棚に置き、下校時に持ち帰る、AED(自動体外式除細動器)の脇に保管場所を作る…など。)
エピペンは患者や保護者が注射するための自己注射器です。
患者が注射できない時は代わりに園・学校の職員が注射しても良く、法律に抵触しません。
教職員は、日ごろからエピペンの使用目的や使用方法を勉強しておきましょう。
救急車には装備されていませんが、救急救命士は患者が携帯しているエピペンを業務として注射することができます。
アナフィラキシーショックは生命にかかわる重篤な状態です。
年間数名がそのために命を落としています。
食物アレルギーのある方がアナフィラキシー症状を起こした場合は、慌てず焦らず慎重にエピペンを注射しましょう。
(Photo by:http://www.ashinari.com/2012/10/23-372029.php)
著者: カラダノート編集部