気になる病気・症状
子供がかかりやすい甲状腺の病気、その原因とは? 気づきにくい甲状腺の病気は専門医へ !
甲状腺ホルモンは、子供の成長には欠かせないホルモンです。これが不足する機能低下症は、発育や発達に深刻な影響を及ぼします。
子供がかかりやすい甲状腺の病気についてみてみましょう。
■クレチン症
クレチン症は先天性の甲状腺機能低下症であり、知能の発達の遅れや知的障害が問題となります。
ただし、現在は新生児マススクリーニング検査が実施され、早期発見・早期治療が行われるようになっているために、ほとんど心配はありません。
■甲状腺機能低下症
非常にまれですが、子供にも甲状腺機能低下症が起こることがあります。先天性のクレチン症と異なり、発育の途中で発症するのが特徴です。
病気に気付くポイントは、身長の伸びの遅れです。小学校入学時になっても、身長が一メートルに満たないような場合は注意が必要です。早めに甲状腺専門医に診断してもらうようにしましょう。
治療は早ければ早いほど効果があり、発育の遅れを取り戻すことができます。
■甲状腺腫
思春期の女子に、首の腫れが見られることがよくあります。これは「単純びまん性甲状腺腫」といって、症状は首の腫れだけである場合がほとんどです。思春期の女子に多いため、「思春期性甲状腺腫」と呼ぶこともあります。
何らかの原因によって甲状腺ホルモンが不足するようになり、それを補うために、甲状腺が肥大すると考えられます。
首の腫れは一時的なもので、治療の必要はありませんが、定期的に血液検査や超音波検査を行ってホルモン機能や腫瘍のチェックをする必要があります。将来バセドウ病や橋本病などになる可能性があるからです。
■急性化膿性甲状腺炎
生まれつき喉の奥に、下咽頭から甲状腺に向かって通る細い管(下咽頭梨状窩瘻)を持っている人だけが発症する病気です。この管に細菌が入り込んで感染し、甲状腺やその周囲に炎症が起こります。小さな子供に見られる病気ですが、大人にもあります。
主な症状としては、喉の片側(左側がほとんど)の痛みや腫れ、発熱などがあります。特に、食事や水などを飲み込むときに強い痛みを感じます。
軽症の場合は抗生物質で治療しますが、腫瘍ができている場合は手術で摘出する必要があります。再発を繰り返す場合にも、管を塞ぐ手術が必要です。
■子供のバセドウ病
子供のバセドウ病は、大人ほど多くはないとされていますが、小学校、中学校、高校と進むにつれ、だんだん増えてきます。
子供と大人とでは、バセドウ病の症状の表れ方に違いがあります。大人のような体の症状(眼球突出や体重減少)が少なく、情緒や行動面に変化が表れやすいのが、子供のバセドウ病の特徴です。
具体的には、イライラして情緒不安定になったり、集中力が低下したりします。自分でもなぜそうなるのか分からず、家族にうまく伝えられずに孤立感を深めたり、友達との人間関係もうまくいかなかったりして不登校になる子もいます。
バセドウ病は体だけでなく、精神面にも影響する病気です。原因が分からない場合は、一度甲状腺の専門医を受診してみることをおすすめします。
気づきにくい!甲状腺の病気
■甲状腺の病気は、自分ではなかなか気づきにくい病気です。
首のはれのような具体的な症状があれば発見されることもあります。
ですが多くの場合、初期は症状があいまいで見逃してしまいがちです。
また、疲れやすい、などの症状は、病気ではなくても見られるため、ちょっとした体調の変化と軽く考えてしまうこともあります。
さらに、全身に多様な症状があらわれるため、他の病気と間違えられやすいのも特徴です。
こういったことから、甲状腺の病気は症状だけで自己判断するのは禁物であり、医師にきちんと診断してもらうことが必要です。
■症状を正しく知って、早期発見
ですが、症状について正しく知ることは、病気を発見するきっかけになりますし、病気を理解する助けになります。
甲状腺の病気の症状は、機能亢進症と機能低下症とでは全く逆のあらわれ方をします。
具体的にどのような症状があらわれるのでしょうか?
機能亢進症の症状
・心臓の症状
最も多いのが、心臓の症状です。胸がドキドキしたり、脈が速くなったりします。
・食べるのに、痩せる
食欲が高まり良く食べますが、痩せてきます。下痢が激しくなることもあります。
・疲れやすく、筋力が落ちる
ものを持つ腕に力が入らない、和式トイレで立ち上がれない、などの症状がでてきます。
・手指の震え
震えは手指だけでなく、下肢にもおよんで、膝がかくかくすることもあります。
・暑がりになり、汗をかく
皮膚はいつも汗で湿ったようになり、口が渇きやすくなります。微熱がでることも。
・イライラする
精神的に不安定で興奮しやすくなったり、集中力がなく、落ち着かなくなります。
・髪の毛や爪の変化
赤く細い髪になったり、脱毛したりします。爪の先が白くなったり変形したり、皮膚が黒くなってかゆみが出ることもあります。
・月経の量が減る
月経の量が減ったり、月経不順になったり、周期が長くなったりします。時には無月経になることもあります。
・眼球が飛び出す
一部の人にあらわれる症状です。また、まぶたがむくむ、まぶたがつりあがるため目が見開いたようになる、複視のためものが二重に見えたりすることもあります。
機能低下症の症状
・体が重く、だるい
精神活動が鈍くなり、無気力になります。心身ともにボンヤリして、動きがゆっくりとなります。
・脳の働きが落ちる
記憶力が低下したり、ろれつが回りにくくゆっくりと話したり、いつもウトウトと眠くなったりします。
・むくみ
全身にむくみがあらわれます。特にまぶたや唇、口の中の粘膜に出ると独特の顔つきになります。声帯もむくむため声がかすれることも。
・寒がりになり、汗が少ない
皮膚はカサカサに乾き、冷たく蒼白に。体温も低くなります。
・食欲がなく、便秘がち
食欲がなくあまり食べないのに、体重は増えます。これは代謝が落ちるためです。
・初めは月経量が増える
初めは月経量が増えますが、重症になると月経不順から無月経になります。
・脱毛する
髪の毛がばさばさになり、眉も薄くなります。
■甲状腺の病気では、人によって症状のあらわれ方もさまざまです。
気になる症状がある場合は、早い段階で医師へ相談してみましょう。
原因不明の体調不良は怠け心ではなく、甲状腺異常かも?
「なんとなく体がだるくて朝起きられない」
「ドキドキして落ち着かない」……、うつや怠け、更年期障害と
誤解されやすい甲状腺異常。
原因不明の体調不良に悩まされている人、
周りから誤解されて悩んでいる人は、
甲状腺異常を疑ってみてください。
●甲状腺異常のチェック項目
甲状腺とは、のどの部分にあるホルモンをつくる器官です。
ホルモンは、脳から体のなかのさまざまな臓器に指令を送る役目を果たします。そのため、甲状腺に異常があると、体のあちこちに不調が出るのです。
甲状腺ホルモンの異常には、多すぎる場合と少なすぎる場合で
2通りの症状があります。それぞれに、症状をみてみましょう。
<ホルモンが多い場合>
動悸、下痢、多汗、イライラ・不眠、
食欲があるのに体重減、コレステロール値の低下
<ホルモンが少ない場合>
倦怠感、便秘、冷え性、皮膚の乾燥、
ボーッとする、記憶力の低下、食欲がないのに体重増、
コレステロール値の上昇
ホルモンが多く出される病気を「バセドウ病」、
少ない病気を「甲状腺機能低下症」と言います。
●甲状腺異常が起こりやすい人
ホルモンを多く出したり、少なくしたりする指令は脳が行います。
しかし、その指令とは別に甲状腺ホルモンの異常を起こす原因が、免疫であることがわかってきました。
しかし、なぜ免疫がそんなことをするのかまでは、残念ながらわかっていないのです。
ここで、甲状腺異常になりやすい人を挙げておきましょう。
※女性……女性は男性の5~20倍かかりやすい
※出産後……出産後、女性の20人に1人は甲状腺異常に
ほかに、ストレスを多く抱えている人、花粉症の人などもなりやすいと言われています。
甲状腺異常は血液検査で見つかるようになっています。
原因不明の体調不良が気になる人は、早めに受診してみましょう。
甲状腺の病気を疑うきっかけ
■発見しにくい病気でも、気づくきっかけはある
甲状腺の病気は自分ではなかなか気づきにくく、他の病気と間違えやすい病気です。
それでも多くの人が、甲状腺の病気に気づいて病院を訪れています。
どのようなことが受診のきっかけになるのでしょうか。
■首の腫れ
首の前部の腫れに自分で気づく場合もあれば、他の人に指摘されて気づくこともあります。
いずれにせよ、この特有の症状は、甲状腺の徴候としてよく知られているので、受診の大きなきっかけになります。
■眼球が突出してきたと感じる
眼球突出はバセドウ病の代表的な症状ですが、あらわれる人はまれです。
ただし、良く知られている症状であるため、顔つきが変わり、目が飛び出してきたと自分で感じ、
病院を受診するケースが時々見られます。
■健康診断や人間ドック
健康診断や地域の集団検診で首の腫れが見つかることがあります。
気が付かない程度の小さな腫れでも、医師が触診すると分かるからです。
また、通常の健康診断の項目にはないのですが、人間ドックなどで甲状腺ホルモン濃度検査(血液検査)を受けて、
甲状腺機能の異常が見つかることもあります。
■疑わしい症状があるときは専門医に
甲状腺機能の亢進や低下によって、さまざまな症状があらわれますが、他の病気と紛らわしい症状が多いです。
はっきりしない場合は、まず甲状腺の病気を疑い、専門医に診てもらうことが大切です。
甲状腺の病気を疑ったら専門医へ
■甲状腺の病気に専門医が必要な理由
甲状腺の病気は、全身に多様な症状があらわれるために、誤診されがちです。
疲れやすい、痩せてきた、などの症状がひどくなると一般内科を受診したり、物忘れやうつのような症状があれば心療内科や精神科へ行ったり、、、
その結果、原因が甲状腺にあることに長い間気づかないまま、誤った治療を続けてしまうケースが多いのです。
こういった事態を避けるためにも、疲れやすい、だるいといった漠然とした症状の場合でも、甲状腺の病気を疑い、甲状腺の専門医を受診することをおすすめします。
甲状腺の専門医を受診するメリットとしては、次のようなものがあります。
■技量、習熟度
経験豊富な専門医なら、患者さんの様子を見たり、首の腫れを触診するだけでも多くの情報を得ることができます。
また、検査結果を的確に判断するためにも、専門家としての技量や習熟度は重要です。
■知識、経験
甲状腺の病気は、肉体面だけでなく精神面にも影響があらわれやすく、治療にも内科と外科の両面からのアプローチが必要です。専門医であれば、臨床経験が豊富で、先端的な医療情報にも通じています。
■信頼関係
甲状腺の病気は、時に10年、20年という長い経過をたどることもあります。
こういった病気の治療は、継続性が重要です。一人の医師が経過を観察し、話し合いながら治療していくことで、
患者さんとの信頼関係が築けます。
■甲状腺疾患の専門医は、全国的に見ても多くはありません。
総合病院の総合案内で相談したり、インターネットで甲状腺専門医について調べてみても良いでしょう。
人間ドックや集団検診で甲状腺の異常が見つかった場合は、紹介状を書いてもらえることもあります。
甲状腺の病気はなぜ起こるのか?
甲状腺の病気がなぜ起こるのか、はっきりとした原因は未だ解明されていません。
しかし、病気の成り立ちから見ると、バセドウ病と橋本病には、明らかに自己免疫がかかわっています。
甲状腺の病気の半数以上は、自己免疫疾患です。
自己免疫疾患とは?
自分の体に細菌やウイルスなどが進入してきても、これを攻撃・排除して病気にならないように体を守る仕組みが免疫です。
血液や体液中に存在するリンパ球が、おかしなものがあると異物(自分のものではない非自己)であるかどうかを見極め、異物であれば抗体を作って排除する仕組みなのです。
しかし時には、存在するのが当たり前の自分の細胞や成分を間違って異物とみなし、それに対する抗体をつくってしまうことがあります。
自分の体の中の細胞や成分に対する抗体を「自己抗体」とよび、認識を間違えて起こる病気を自己免疫疾患といいます。
自己抗体が甲状腺を攻撃
バセドウ病の場合は、甲状腺細胞にあるTSH受容体に対する自己抗体(TSH受容体抗体、TRAb)ができ、このTRAbがTSH(甲状腺刺激ホルモン)にかわって甲状腺を刺激し続け、甲状腺ホルモンがどんどん作られてしまいます。
また、橋本病の場合は、甲状腺の細胞が抗原になり、これを攻撃する自己抗体ができます。この自己抗体が甲状腺に慢性の炎症を起こし、組織を破壊していくため、甲状腺機能低下症になります。
遺伝は影響する?
このような自己免疫反応には、遺伝とのかかわりも考えられます。
バセドウ病や橋本病は、病気になりやすい体質が遺伝することがありますが、だからといって必ず発病するとは限りません。
甲状腺の病気は、特殊な場合を除いて、原因となる遺伝子がいくつもあると言われています。そこに年齢、環境など複数の要因が重なり合ったときに発病します。
(Photo by http://www.photo-ac.com/ )
著者: カラダノート編集部