介護・認知症
在宅介護で気をつけよう!高齢者のケア~着替え・お風呂などで気をつけたい事故やケガ
朝起きてパジャマから着替える、入浴後や汗をかいて清潔な衣服に替える、寒さや厚さを感じて服を着脱する…毎日、「着替える」という動作をします。
高齢者にとって体温調節や清潔の保持、生活リズムを作るためには欠かせない着替えも、時に事故やケガにつながります。
着替え時に気を付けたい事故・ケガの具体例を挙げます。
なぜ着替え中にケガをするのか
着替えには、肩や足の上げ下ろし、つまむ、引っ張る、体をひねるといったさまざまな動作が含まれます。これらの動作をスムーズに行えないと、転倒などの事故が起こります。
高齢者の関節は加齢によって可動域が狭くなり、関節疾患などがあれば拘縮もみられます。筋力が低下し、姿勢の保持も困難です。疾病の後遺症で麻痺があれば、思うように体を動かせないでしょう。
体の柔軟性が失われ、バランスをとりづらくなるため、着替え中の動作でケガをしやすくなります。骨密度が低下していれば、些細な事故でも骨折などの大ケガに至ります。
具体例と対策
ズボンや下着(パンツ)の履き替えでは、片足を上げてバランスを取ることができず、転倒の危険があります。椅子やベッドに座り、片足立ちにならないで済むような着替え方をしてください。
手すりがある場所で着替えるのも良いでしょう。靴下の着脱も、同様の注意が必要です。
上着に袖を通す、頭を通す際に肩をひねって脱臼したり、腕や腰に負担がかかってじん帯を痛めたり、骨折する高齢者もいます。襟ぐりが大きく開き、袖や身ごろにゆとりがあるデザインがお勧めです。
安全な場所で体勢を整えてから着替えることが大切です。衣服のデザインや素材にも気を配ってください。
高齢者の爪切り コツと注意点
高齢者の皮膚は乾燥しやすく、痒みも伴います。無意識に皮膚をかいている高齢者も多く、皮膚を傷つけないよう、爪は常に短くしておきたいものです。
高齢者の爪を切る際のコツ、注意点をまとめました。
爪を切る道具
普通の爪切りを使うほか、厚くなった高齢者の爪には、ハサミ型やニッパー型の爪切りも便利です。どれも介護用品店・ドラックストアなどで簡単に入手できます。
切り終えた爪をやすりで磨くと、皮膚をかいても傷つきにくくなります。
切りやすくするための工夫
硬く分厚い爪なら、切る前に手をぬるま湯につけておきます。これは、「手浴」という方法です。お風呂上りなら両手足の爪が柔らかくなっているので、絶好の爪切りタイムでしょう。
高齢者と向き合って切るよりも、並んで座る方が切りやすいでしょう。足の爪を切るなら、自分の太ももや台に高齢者の足を置き、安定させて切りましょう。
切り方
高齢者の指をしっかり持ち、爪切りを持っていない方の手で高齢者の指を押し下げて爪との間に隙間を作ります。隙間に爪切りやハサミを滑り込ませ、肉を挟んでいないか確認してから切ります。
巻き爪にならないよう、爪の両角は丸く切らずに、まっすぐ切ります。
注意点
指の肉を挟んでいないか、横からよく確認してから切ってください。
爪と指の間に白くてポロポロしたものが詰まっていたら、水虫かもしれません。水虫は感染力が強いので、医療用のピッタリしたゴム手袋を使って切ると良いでしょう。使用後の爪切りは、アルコール消毒してください。そして皮膚科で水虫の薬を処方してもらいましょう。
爪切は、巻き爪などを除いて訪問介護でも依頼できます。しかし、爪切りをしない、使用する爪切りのタイプを限定するといったところもあるので、どこまで対応してもらえるのかを確認してください。
熱いお風呂が好きな高齢者には注意!冬のお風呂は温度のOK・NG!熱いお風呂に潜む、命の危険性…
きちんと湯船につかることは、健康のためには大切にしたい習慣と言えます。ですが、その習慣もひとたび間違えれば、命を奪う危険な場所になりかねません。お風呂そのものが、人に牙をむくようになるかもしれないのです。
危険な熱~いお風呂
若い方の場合、湯船に浸からないでシャワーで済ませるという人も多くいると思います。一方で、特に高齢な方の場合、じっくりと湯船につかるのが好きな人もいるでしょう。
中でも危険視されるのが、熱いお風呂が好きな高齢者の方です。
まず高齢であると、それだけで血管が固くなってしまいます。血流というのは、体の状態によって多くなったり少なくなったりしますので、その血流の変化に耐えられる柔軟性が血管には重要なのです。しかし高齢になればその柔軟性が低下します。
これに加えて、熱いお風呂というのが血管に悪い影響を及ぼします。急激に体が熱を感じれば血流が増大し、その血管の変化についていけなくなります。
これで増大するのが、脳梗塞や心筋梗塞といった、突然死の可能性です。また、血管に負担がかかるということは、心臓にも負担がかかるということですから、心不全などの可能性も増します。
じゃあ、危険なのは何度なの?
お湯の温度によって、死亡者の数を数えると、43度のときの死亡者の数がとても多いのだそうです。
熱いお風呂が好きな方は、43度か、もっと高い温度につかることもありますよね。
43度のお風呂に入ると、血管に負担がかかるだけではなく、血液の粘度が増し、つまりやすくなるのです。
何度の温度なら安全に入浴できる?
安全と言える温度は40度以下ですが、冬の入浴ならば、41度以下のお湯が推奨されるそうです。
温度が下がると、体の温まり方が不足しそうですが、この2度か3度の差には、体の温まり方を大きく左右する差はないそうです。
熱いお風呂にどっぷりつかるのが好きという方もいるでしょう。それでお風呂に入った気がすると感じる方もいると思います。
ですがこうした、体への影響は突然症状として顔を出します。ですから、それまで大丈夫であっても、これからは注意をしなくてはいけないのです。
とっても大事!高齢者のフットケア
高齢になってくると、足のトラブルが増えて外出がおっくうになったり、転倒しやすくなってしまうなどのことが起こってきます。
普段からフットケアを行うことで、そのような状況を予防することができます。
以下にフットケアの方法をご紹介します。
足湯(フットバス)
足の角質をやわらかくしたり、血行をよくすることでフットケアが行いやすくなります。
また血行をよくすることで、新陳代謝がうながされて爪や角質の状態も改善されます。
爪を切る
最初に横一線に切ります。このとき白い部分が残るぐらいにしておきます。あまり切りすぎると深爪になってしまいます。
次に横の角をななめにカットします。小指の爪は切りすぎるとなくなってしまうこともあるので、ある程度までは伸ばしていても大丈夫です。
平らな下敷きなどを、指にまっすぐあてて爪があたらないくらいの長さがいいでしょう。
保湿とマッサージ
乾燥が進むと、角質や爪がより硬くなっていってしまうので、保湿やマッサージは大事です。
保湿クリームを足全体にすりこむように塗って、血行がよくなるように縦方向と横方向にマッサージを行います。
足の裏、足の甲、指の先もまんべんなくマッサージしてください。
靴と靴下はサイズの合ったものを着用する
靴はつま先がきつくなく、横幅がぴったりしていること、通気性がよいこと、中敷きがフィットしていることなどをチェックして選んでください。
靴下はゴムがきつすぎず、通気性の良い素材のもので、足を圧迫しないものを選んでください。
高齢になると足の角質が厚くなる、爪が硬くなるなどが起こってくるので、日々のフットケアが重要になってきます。
入浴よりも手軽に高齢者を清潔に!清拭をする時の注意点
入浴よりも手軽に高齢者の清潔を保てる清拭ですが、いくつか注意したい点もあります。適切に清拭を行うため、次の点に気を付けてください。
環境・準備
◆事前の健康チェックを忘れずに
顔色や体温など、ふだんと違ったところがないかを観察しましょう。不調の時には、衣服の着脱、体位変換が高齢者の負担になります。関節疾患で痛みがあるなら、痛みが強い日は部分清拭など可能な範囲にとどめましょう。
◆室温
清拭に適した室温は22~24℃です。拭いた部分が冷えやすいので、冬は特に室温管理に気を配ってください。
◆時間帯
空腹時・食後すぐは気分が悪くなる恐れがあるので避けてください。寝起き、就寝前、排せつ後など、高齢者にとって良いタイミングで行いましょう。冬なら、暖かい日中がお勧めです。
安全面
◆タオルの温度は毎回確認する
タオルを浸すお湯は50~55℃が適温です。電子レンジで濡れタオルを加熱する方法なら、約3分の加熱時間です。
この通りに作った温タオルでも、タオルを取り換える度に温度のチェックが欠かせません。特に電子レンジで作った温タオルは、温度が均一ではない可能性もあります。
タオルの温度は、自分の腕の内側に押しあてて確認します。手のひらは皮膚が厚く温度を感じにくいため、皮膚が薄い腕の内側が適しています。介護者にとっては適温でも、皮膚が薄い高齢者には熱く感じるかもしれません。
初めにひと拭きしたら、熱すぎないかを尋ねましょう。
◆体位変換・支持は関節部分を利用して
腕や足を持ち上げる際、上腕やふくらはぎを強くつかむと痛みを感じたり、簡単にアザが付いてしまう場合があります。腕を持ち上げるなら肘を、足を立て膝にするなら膝の裏側を支えると、少ない力でしっかり支えられます。
◆皮膚に赤みがあったら
床ずれ(褥瘡)の前兆になるような赤みを皮膚に発見したら、刺激しないようにしましょう。皮膚がよれ、そこから床ずれになる恐れがあります。
既に床ずれがある場合も、決してこすってはいけません。医師や訪問看護師に診てもらいましょう。
高齢者のデリケートな皮膚に配慮しましょう。
高齢者の嚥下障害 基礎知識編
食べることは生きる基本ですが、年とともに「食べ物を飲み込む」動作がスムーズにできない「嚥下障害」を起こす高齢者が増えます。
注意したい嚥下障害の症状や原因をまとめました。
症状
口の中のものを、上手に飲み込めなくなります。
食べ物だけではなく、飲み物や自分の唾液も飲み込みづらくなるのが嚥下障害の症状です。
高齢者がむせやすくなった、食事にかかる時間が長くなった、口から食べ物や飲み物をこぼす、いつまでたっても食べ物が口の中に入っている…これらのどれかに当てはまるようなら、嚥下障害の可能性があります。
原因
高齢者の嚥下障害で、大きな原因の一つが、脳血管障害などによる体の麻痺です。
食事の時、人は無意識のうちに食べ物を口の中でまとめ、食道へと送り込みます。麻痺があると、この一連の動作がスムーズにできません。何かをのみ込む際には、ちょうど良いタイミングで嚥下という反射が起こりますが、この反射も起こりにくくなります。
疾患がなくても、加齢によって体のほかの部位と同様に頬・顎・のどの筋力が衰え、嚥下の能力が低下することで嚥下障害が起こります。
高齢者に多い、唾液分泌の減少による口腔乾燥(ドライマウス)も、嚥下障害の一因です。
嚥下障害で起こる問題
一番怖いのが、誤嚥です。食物や水分をスムーズに食道から胃へと送ることができず、喉の奥から気管に入ってしまいます。むせて苦しいだけではなく、食物や水分とともに口内細菌が気管から肺にまで入ってしまう恐れがあります。これが原因で起こるのが、誤嚥性肺炎です。誤嚥性肺炎は、高齢者に多い死因です。
食事が十分にとれなくなり、体重減少から衰弱に至るのも、嚥下障害の引き起こす問題です。
年を取れば、誰でも嚥下障害になる可能性があります。持病や麻痺がなく、一見して食事ができているようでも、注意して見守り、嚥下障害の前兆を見逃さないようにしてください。
(Photo:http://www.ashinari.com/)
著者: カラダノート編集部