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日本の抗体検査システムの不備?シャーガス病感染リスク問題とは

 

 

『シャーガス病』の血液製剤による感染率は、血球の種類によって異なる

 

2013年9月頃のニュースで、『シャーガス病』という馴染みの無い感染症に日本人の方が感染したという報道を聞かれた方もいらっしゃるのではないかと思います。ニュースの詳細としては、今年の6月に、中南米出身の男性が献血した血液から、国内初のシャーガス病の抗体が検出されたことが分かり、その血液から日本人10人に輸血が行われたのではないかと言う内容でした。しかしながら、この問題に対して朝日新聞の医療サイトにて見解を書かれていた熱帯医学専門の医師によると、結論としては、『国内で献血された血液は、フィルタを通して赤血球、血漿、血小板の3つの血球に分離され、低温で数十日間保存されるので、寄生虫が生存している可能性は低く本当に感染しているか事実確認が必要』であるとされています。実際、輸血されたとされている「赤血球・血漿製剤」は後述のような処理が施されていますので、感染リスクは非常に低いと思われます。 

 

血小板製剤のみ、感染リスクがある?

 

現在国内の血液製剤の管理水準に沿って考えると、シャーガス病の感染リスクは最も高い割合で12%、それ以外の割合では0%であると言われています。この確率の違いは、血液が以下3種の血球に分離して輸血されることに起因します。採血後に遠心分離機にかけられ、「赤血球」「血小板」「血漿製剤」へと分離され、フィルタによる不要成分の除去と放射線処理、低温処理が行われます。これらの処理によって寄生虫が生きられる可能性は極めて低くなります。詳細な3種の血球の保存環境は・・・

 

◆赤血球
保存温度2~6℃使用有効期限21日間

◆血漿製剤
保存温度-20℃使用有効期限1年間

◆血小板
保存温度20~24℃使用有効期限4日間


上記より、赤血球又は血漿製剤を輸血された場合のシャーガス病感染率は0%、血小板の場合のみ12%であるとされています。今回のニュースのような「赤血球・血漿製剤」による輸血であれば、感染のリスクは極めて低いと思われます。
(※過去米国・欧米にて起こったシャーガス病感染11例では、全て血小板製剤による輸血、また対象者は癌患者など免疫力低下が見られる者であったとされています。)

 

中南米出身者の国内滞在数増加に、医療システムが対応しきれていない?

 

今回の報道の記事の一部には、献血者の中南米出身者の男性が『感染症を日本に持ち込んだ』ような印象を与える一文が書かれたものもあったようですが、本来この問題で追求されるべきは、日本の医療システムの対応の遅さであり、他国に比べ非常に時間がかかり過ぎていることにあると言われています。日本では、1990年『出入国管理法』が改定されたことで、中南米から日系ラテン系アメリカ人の方を単純労働者として雇い入れることが増え、過去1985年時点では約2000人程度であったラテンアメリカ系の滞在者が2007年には約31万人にまで増加しました。

 

これほど多くの滞在者が暮らしているにも拘らず、シャーガス病の病原体である「トリパノソーマ・クルージ」の検査が行われていたのはごく一部の献血センターのみで、全国的な検査体制が整備されたのは、今年2013年の4月に入ってからであると言われています。この対応のスピードの遅さは、他国の例から見ても異例であると指摘されています。

 

他国での『シャーガス病』に対する検査体制はいつから始まったか?

 

シャーガス病は、多くの国民においては非常に聞きなれない新種の感染症であるかのように感じてしまうと思いますが、厚生労働省や日本赤十字においては数年前から専門家が国内感染リスクを訴えていたことからも、危険性に対しての認識があり、中南米諸国では数十年前から既に、輸血を介して感染するという報告があったそうです。他国の抗体検査開始時期については以下のものになります。

 

<シャーガス病検査体制の他国の開始時期>
◆イギリス・・・1998年~
◆スペイン・・・2005年~
◆カナダ・・・2009年~
◆米国・・・2007年~

 

日本の対応は上記のように2013年4月からですので、カナダよりも約4年遅れての開始となっています。今後新たな感染症が確認された際に、早急な検査体制を整備する迅速さが求められています。

 

最後に

 

日本赤十字の資料よりますと、今回のようにラテンアメリカ出身の方が献血される数は毎年100名以上おられると言うことです。海外では、シャーガス病感染の回避の意味から、ラテンアメリカの方からの献血を一切受け付けていない国もあるようです。

日本の献血率は少子高齢化の流れによって年々低下しており、その不足分を補うためとして、将来的に人工血液(化学的に赤血球を合成して代用とする)の代用化が不可欠であると言われています。人工血液は未だ解決できていない問題が様々にあり、中でも免疫系が存在しない問題にどう対処するのかは未だ糸口が見つかっていません。

 

今回の問題に関しては、日本の抗体検査システムが早期に整備されていれば回避できた問題であり、ラテンアメリカの方の貴重な善意を無駄にすることなく利用できるように、今後も外国人の方への医療システムの柔軟な対応が必要であるように思います。

 

こちらの記事も併せてどうぞ!

中南米由来の感染症『シャーガス病』とは?

 

 

(photo by://pixabay.com/ja/%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3%E6%8E%A5%E7%A8%AE-%E3%83%84%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%B3%E5%8F%8D%E5%BF%9C%E6%A4%9C%E6%9F%BB-%E6%B3%A8%E5%B0%84%E5%99%A8-%E6%B3%A8%E5%85%A5%E3%81%99%E3%82%8B-%E5%8C%BB%E5%B8%AB-%E5%8C%BB%E7%99%82-67477/)

著者: あせちるこりんさん

本記事は、2016-08-01掲載時点の情報となります。
記事内容について実行の際には、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


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